「パンドラ・アイランド」(07年 大沢在昌 徳間文庫)
離島に保安官として雇われた元刑事が殺人事件を解決する。大沢の「新宿鮫」シリーズ(91年~)は面白く読んだが、これも一種の刑事モノ。「新宿鮫」に比べずっと会話が多く、キッチリ読み込まないとスジを外しそうになったが犯人捜しの長編ミステリーを充分楽しめた。登場人物で特段に面白かったのが元妻(警察官僚と推定)や風俗嬢との会話。元妻とのそれは、親友との親しい会話だし風俗嬢とのそれは純情恋愛物語といったところか。ふたりのステレオタイプの女性はワタシたち男の夢である。
うん、これは書いておかねばと思ったこと。この文庫本の装丁が良かった。この文庫本の装丁だけで、ハードボイルドらしさが伝わる。上巻は葉っぱ(コカの葉らしい)が、下巻は銃弾が描かれ、本作の重要なキーワードになっている。
「パンドラ・アイランド」では鉄条網ごしの海をデザインした<ハードカバー>(徳間書店)、ヤシの木と白い砂の<上下合本版>(徳間文庫)、船の丸窓から見える島の<集英社文庫>と、装丁に様々な工夫がみられるのも面白い。
「命の遺伝子」(11年 高嶋哲夫 講談社文庫)
既読の本を図書館から借りてしまうことが良くある。「命の遺伝子」がそうだった。16年ころから、面白く、あるいは思い切りつまらなく読んだ本の記録を付け始めたのは、そういうミスが増えてきたから。自分に残された時間がそうたくさん残されていなくても、何度も読みたい本もいくつもあるが、ウッカリ既読の本をまた読み返すのは業腹だ。
ナチスの残党がアマゾンの奥で生き残っていて、第3帝国の再建を窺う、なんてヨタ話はいままで多く接してきたが、「命の遺伝子」では遺伝子工学にスポットを当て、ナチ存続節に真実味を出している。最初の数10ページを読んで、既読なのに、グイグイ引き込まれる。片道2時間弱の通勤生活が長かったから、その頃に読んだ本に違いない。かなり忘れているが、登場人物の描き方とかをところどころ憶えている。
つまらない本で時間を浪費するよりと、また読み始めた600ページ強の大作。
昔、転勤先の神田でウマいラーメンを見つけた。感動の塩ラーメン。背油コッテリなのに重くなく、具は一切れのペラペラ焼き豚と青ネギ。12時を過ぎると長い列ができるので、今日は食べるぞと意気込んだ日はお昼前に、それでも列に並んで食べた。工事のためそのラーメン屋がなくなるまでの約2年間、毎週2回、多いときは3回並んだのだが、テーブルに届けられたアツアツの塩ラーメンの背油をレンゲでよけ、スープを口に運んだときの衝撃の旨さは毎回のことだったし、今も舌が記憶している。
面白い本なんてのは、出会いから感動の塩ラーメン、そういうものじゃないかな。
2025年12月30日火曜日
2025年12月15日月曜日
ロバの耳通信「月の満ち欠け」「天空への回廊」
「月の満ち欠け」(17年 佐藤正午 岩波書店)
佐藤正午を「アンダーリポート/ブルー」(15年 小学館文庫)で初めて知って面白さに目覚め、続けて読むことになったのがこの「月の満ち欠け」。リーンカーネーション<生まれ変わり>を題材にした、ミステリー。新しいカタチの恋愛小説ーと言ってもいいだろう。
登場人物は多くはないが、誰かは誰かの生まれ変わりだとか、誰かは誰かの友達だとか、私は元々人の名前と顔がなかなか覚えられないタチ(一種の病気らしい)だから、えらい苦労して読み進めた。あげく、哲彦をアキヒト、哲をアキラと読ませたりの判じ物みたいなところがあるから余計に迷い込んでしまった。とはいえ、読みやすい文章だし、スジを多少違えても小さな物語は完成度が高く、それぞれ十分に楽しめた。
一旦読み終わって、先に読み終えていたカミさんの解説をフンフンとわかったふりをして聞き、もう一度最初から読まなければキチンとこの作品の良さをちゃんとわかることができないと思うのだが、佐藤の作品は手探りが本領だから、スジを全部わかってしまうと感動が半減することを前読の「アンダーリポート/ブルー」で経験済み。さて、どうしたものか。
「天空への回廊」(04年 笹本稜平 光文社文庫)
エベレスト山頂近くに落ちたアメリカの人工衛星の回収作業に中国、ロシアまで加わり、人工衛星は実は核兵器だった。と、山岳サバイバル+スパイものでエンターテインメント要素たっぷりの小説なのだが、何せ長い。日本人登山家をヒーローにしたのはいいが、登場人物が多すぎ。それらの性格描写や動きまで丁寧に描き込んでいるから、長い。文庫版650ページの後半はそれなりに盛り上がるから楽しいのだが、この長さ、また読みたいという気になれない。
気に入った本は、時間をおいてまた読むことが多い。初回はストーリーに追われながら性急さを楽しみ、二度目は主人公の行動だけでなく環境や季節などを意識しながら、じっくり読み解く。そうして、牛が反芻するように味わうのが常で、何度も読んだ本も多いのだが、「天空への回廊」は、ただジェットコースターで飛びゆく風景のようにスピード感あるストーリー展開を楽しんで、終わり。もっと長い本やシリーズものを何度も読むこともあるから、長さへの抵抗だけではないのだろう。つきつめれば、ワタシの「好みじゃない」ということか。何度も書くけど、面白かったんだけどね。
佐藤正午を「アンダーリポート/ブルー」(15年 小学館文庫)で初めて知って面白さに目覚め、続けて読むことになったのがこの「月の満ち欠け」。リーンカーネーション<生まれ変わり>を題材にした、ミステリー。新しいカタチの恋愛小説ーと言ってもいいだろう。
登場人物は多くはないが、誰かは誰かの生まれ変わりだとか、誰かは誰かの友達だとか、私は元々人の名前と顔がなかなか覚えられないタチ(一種の病気らしい)だから、えらい苦労して読み進めた。あげく、哲彦をアキヒト、哲をアキラと読ませたりの判じ物みたいなところがあるから余計に迷い込んでしまった。とはいえ、読みやすい文章だし、スジを多少違えても小さな物語は完成度が高く、それぞれ十分に楽しめた。
一旦読み終わって、先に読み終えていたカミさんの解説をフンフンとわかったふりをして聞き、もう一度最初から読まなければキチンとこの作品の良さをちゃんとわかることができないと思うのだが、佐藤の作品は手探りが本領だから、スジを全部わかってしまうと感動が半減することを前読の「アンダーリポート/ブルー」で経験済み。さて、どうしたものか。
「天空への回廊」(04年 笹本稜平 光文社文庫)
エベレスト山頂近くに落ちたアメリカの人工衛星の回収作業に中国、ロシアまで加わり、人工衛星は実は核兵器だった。と、山岳サバイバル+スパイものでエンターテインメント要素たっぷりの小説なのだが、何せ長い。日本人登山家をヒーローにしたのはいいが、登場人物が多すぎ。それらの性格描写や動きまで丁寧に描き込んでいるから、長い。文庫版650ページの後半はそれなりに盛り上がるから楽しいのだが、この長さ、また読みたいという気になれない。
気に入った本は、時間をおいてまた読むことが多い。初回はストーリーに追われながら性急さを楽しみ、二度目は主人公の行動だけでなく環境や季節などを意識しながら、じっくり読み解く。そうして、牛が反芻するように味わうのが常で、何度も読んだ本も多いのだが、「天空への回廊」は、ただジェットコースターで飛びゆく風景のようにスピード感あるストーリー展開を楽しんで、終わり。もっと長い本やシリーズものを何度も読むこともあるから、長さへの抵抗だけではないのだろう。つきつめれば、ワタシの「好みじゃない」ということか。何度も書くけど、面白かったんだけどね。
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