2024年5月30日木曜日

ロバの耳通信「ミッション・ワイルド」「マイ・ブラザー 哀しみの銃弾」

「ミッション・ワイルド」(14年 米仏合作)原題:The Homesman)

トミー・リー・ジョーンズの主演・脚本・監督でリュック・ベッソン製作、面白くないワケがないのだが、なぜか日本では劇場未公開らしい。

Homesmanとは、開拓地で暮らせなくなった移住者を出身地に連れ帰る仕事を請け負う人。こういう救済システムみたいなものは実際あったらしい。教会が中心になってたようだ。
時代は南北戦争直後の西部。この映画では、開拓地の暮らしの中で精神を病んだ3人の女を馬車で約400マイル離れた教会に届けるというこの割の合わない仕事を引き受けた未婚の女(この時代ではオールドミスーヒラリー・スワンク)と、この女に雇われた流れ者(トミー・リー・ジョーンズ)が主人公。4人の女とひとりの男が哀しい。誰にも愛されないこの未婚の女の孤独は若い頃からモテることのなかった私には多少わかる。だが、3人の女の不幸はさらに酷い。ちょっと具体的にはココに書けないほど酷い目に遭って狂ってしまっている。演技とはいえ、女の狂ったのは怖い。

面白い役だったのがメリル・ストリーブ演じた、受け入れ先の牧師の妻。ひとことで言えばノー天気。この孤独と不幸続きの2時間の映画の終わりでつくり笑顔を見せられてもね、ゾッとしてメリル・ストリーブがより嫌いになった。

「マイ・ブラザー 哀しみの銃弾」(13年 米仏合作)原題:Blood Ties

主演が英男優のクライヴ・オーウェンでなんだかヨーロッパの匂いがすると思って見終わってからチェックしたら、米仏合作、しかもフランスの名優ギヨーム・カネ主演の「Les Liens du sang」(13年 仏)のリメイクだと。どうりでやたらお涙頂戴の情話風だし、配役、特に米仏混成女優たちのチグハグさが鼻につくなと。

物語は7年の服役後出所した男が、身内や前妻にも歓迎されず、再び悪の世界に身を落としてしまう、と、まあよくあるハナシ。
クライム映画はキライじゃないが、どうもこうウジウジしたフランス浪花節はどうもね。2時間半も待たされての終わり方もスカッとしていないし。

2024年5月15日水曜日

ロバの耳通信「INFINI/インフィニ」「アンロック/陰謀のコード」

「INFINI/インフィニ」(15年 オーストラリア)原題:Infini

原題は惑星の名前。そこにはエネルギー源となる鉱石があり割りのいい採掘の仕事があるが、行くにはスリップストリームという位相空間移動じゃないといけない。空間移動は人によっては狂ったり死んだりすることも。

鉱石が人間を狂わせる生物に汚染されていることが分かり、鉱石を自動転送するシステムを停止し、現地の技術者を連れ戻すための部隊をイニフィニに派遣することに。空間移動とか、鉱石そのものが生命体で、派遣されてきた人々の細胞を吸収することで成長するとか、SF映画らしい突拍子もないスジだったし、途中ダラけたが、まあ面白かった。


同類の「エイリアン」シリーズ(79年~ 米)みたいに、最後に続編を示唆するラストがあるかと期待したのだが、なーんにもなし。残念。


「アンロック/陰謀のコード」(17年 英・米合作)原題: Unlock

CIAとMI6、イスラムテロ集団、三つ巴のスパイアクション映画。スジはどうでもいいがキャスティングがすごい。映画は「完落ち」の意味。監督はマイケル・アプテッド、出演のノオミ・ラパスは好きな女優じゃないから(個人的に置いておいて)マイケル・ダグラスとかジョン・マルコビッチとか重鎮をいい役に配置。オーランド・ブルームなんぞは役もはっきりしないチョイ役扱い。これだけ役者を揃えると、製作陣も脚本も製作費も半端じゃいけないのだろう、おかげでスピード感のある面白い映画になった。

きわめて個人的な感想を書くが、ノオミ・ラパスのキシャな体と表情のなさは、スパイアクションの主役じゃない。

2024年5月5日日曜日

ロバの耳通信「テイキング・オブ・デボラ・ローガン」「ファースト・キル」

 「テイキング・オブ・デボラ・ローガン」(14年 米)原題:The Taking of Deborah Logan

アルツハイマーだとみられた老女が実は悪魔憑きだったというとんでもないハナシ。

事前チェックなしで見始めたオープニングではアルツハイマー病の記録フィルムを使っているとのテロップが流れ、「X-Men」シリーズ(00年~ 米)、「ボヘミアン・ラプソディ」(18年 米)など多くの有名映画の監督ブライアン・シンガーの作品だったし、テレビシリーズ「Dr.HOUSE」(04年~ 米)で、疾病を解説してくれていたので、アルツハイマー患者を扱った、結構ハードルも高いドキュメンタリー作品だと思っていた。事実、映画のスタート部分は、アルツハイマー症状で老女が奇行を繰り返し、明日は我が身の認識もあったのでそのつもりで見ていたのに、実はとんでもないオカルト・ホラー映画だった。

アルツハイマー病を悪魔憑きと結びつけるなんて、どうかと思うよ。この映画、ワタシが大嫌いなヘビがたくさん。それだけでも腰が引けてしまっているのに。とにかく、誰にでも訪れる老いと悪魔憑きを一緒にする感覚は許せん。


「ファースト・キル」(17年 米)原題:First Kill

学校でイジメに遭いメゲてしまった幼い息子と、故郷の田舎町で一緒に狩りをすることで親子の絆を修復しようとする若い父親のヤング・エグゼクティブ(ヘイデン・クリステンセン)の物語。ヘイデン・クリステンセンは「スターウォーズ」シリーズ(02年~ 米)でアナキン・スカイウォーカーを演じ、散々こきおろされた軟弱男。極悪な町の保安官を演じた町の保安官役のブルース・ウィリスとは存在感が違う。ストーリーは、混み入っていて説明ももどかしいが、結局軟弱男が敵をやっつけ、息子との絆を取り戻すというハッピーエンドなんだけけれど、いまいち共感できないのはなぜだろう。ライフルを撃たせたり、父親の強い姿を見せられても、帰ればイジメは続くだろうし、父親は相変わらず家庭を顧みないだろうし。父と息子へのこだわりをアピールしたかった割りには父親の強さが見えてこないし、これだけ母親の存在感のないアメリカ映画もは珍しい。

本国アメリカで公開されていないのは何故だろうか。やっぱり、面白くなかったんだろうな。