2025年11月25日火曜日

ロバの耳通信「ウォールストリート・ダウン」「THE 4TH KIND フォース・カインド」

「ウォールストリート・ダウン」Assault on Wall Street(13年 カナダ)

金融危機の際、すべての財産と難病の妻を失った警備員の男が、アサルト・ライフルで地方検事やら自分に不良債権を掴ませた証券会社のトップやらを撃ちまくるというなんとも、八つ当たりがすぎないか感いっぱいの映画。仕事を失い、家を失い、健康保険も下りなくなった妻は自殺と、ジワジワと金に苦しめられてゆく様子は、そこまで酷い目に遭ったことはないにせよ、投資の失敗で青くなった経験のあるワタシにも理解できる。彼をダマした極悪ブローカーもいただろうが、ビルの駐車場から正面のビルの窓から見える証券マンたちをかたっぱしから撃つとか、証券会社に乗り込んで見境なく撃ちまくるとか、やっぱ、やりすぎだって。
この映画には主人公ドミニク・パーセルの友人の警備員役にワタシの好きなエドワード・ファーロングが例のヤク中毒風かついつもの哀しそうな顔で出ていた。あれだけ、薬物やアルコールなどで問題を起こしながらも役者でいられて、日本での人気が本国のソレを格段に上回っている不思議なエドワード・ファーロング。デビュー作の「ターミネーター2」(91年 米 ジョン・コナー役)以来、地味に頑張っているが、「ウォールストリート・ダウン」以降見ていないから、また問題をおこしているかも。

「THE 4TH KIND フォース・カインド」(09年 米)

題の意味は例のUFOとかの「第四種接近遭遇」のことらしい。宇宙人にさらわれたとかソノくちのドキュメンタリー風に仕上げられてはいるが、wikiによると嘘っぱちドキュメンタリーらしい。夫を殺され(実は自殺)、娘を宇宙人にさらわれた(と言っている)女性心理学者の役をミラ・ジョボビッチが演じているが、「バイオハザード」(シリーズ 米映画)のアリスの颯爽さとは違い、娘がいなくなりキチガイのように泣き叫ぶ普通の母親の役。

UFOとかを信じてやまないカミさんいわくは、こういう映画は、真実を隠蔽するために作られているから、裏のウラまで読まなければならないらしい。映画としてはいい出来でなかなか面白かった。先日、「パラノーマル・アクティビティー」(07年 米)”超常現象”を「また」見たが、バカバカしくて「やっぱり」途中で放棄。まあ「THE 4TH KIND フォース・カインド」のほうがアレよりは良かったかな。

2025年11月2日日曜日

ロバの耳通信「七十歳死亡法案、可決」「君たちに明日はない」

「七十歳死亡法案、可決」(15年 垣谷美雨 幻冬舎)

破綻寸前の日本政府が窮余の策として強行採決した”七十歳死亡法案”が2年後に施行され
ることになった。新法は寿命の足切り、70歳になると安楽死させられるというとんでもない法律だが日本救済のアイデアとしては説得力があった。どうせ長生きできないのなら今のうちにという享楽主義の蔓延など、死を前提にした人々の心境の変化が興味深い。

この小説の主人公は、ワガママな義母の介護に疲れ果てている主婦。新法のおかげであと2年で、このワガママの世話をしなくていいのだと喜んだものの、あと2年がガマンできない。引きこもりの息子、寄り付かない娘、何より能天気の夫とその兄妹たち。全員、敵。登場人物のすべてがステレオタイプに描かれてはいるものの、イマの日本の家庭の縮図。著者の垣谷はそれを最後まで描き切れず、ハッピーエンドにしてしまったのがかえすがえすも残念。長生きなんかしたくないと多くの年寄りが思っている「本音」を垣谷はホントは理解していないんじゃないか、そんな気がした。




「君たちに明日はない」(07年 垣根涼介 新潮文庫)

リストラ請負人を描いた痛快無比のエンターテインメント小説。あとがきで、垣根自身が”小説は、魅力的な人間像を描くことが重要”と述べているが、登場人物の全員がイキイキと描かれ、文句ない面白さだ。続編(「借金取りの王子」)もあり、テレビドラマ化されているというが、本作を超えているだろうか。テレビドラマの方は、配役を見たら、動画サイトで探す気にもならなかった。小説のイメージとゼンゼンちがう・・。案の定、話題にもならなかったらしい。

垣根には会社員の経験があるという。(首を)切られる側か切る側かの立場に立ったことがあるのかもしれない。管理職としての会社の見方や、企業再生屋の説明なども的を得ている。若い会社員にも読んでほしい気がする。