ほかのフィクション作品とは大きく異なり、実際に起きた東日本大震災を題材にした「小説」仕立ての福井の主張である。”この世に「絶対」などありえない””どんなに苦しくとも現実を直視し、ありとあらゆることを極限まで突き詰めて考え、実現すること”を震災後に再三言い続けてきて、この本の解説でも繰り返している石破茂の主張とも齟齬がない。
子供たちにどんな未来を見せられるかと問われ、返事に困窮するだけではダメだと。ずしりと、重い。ただ、福井が主人公の口を通じて熱く語った”太陽発電衛星”は、どうかな。脱原発の代替案としての考えを持たないワタシに、福井の案を笑い飛ばす資格はないのだが。
「愛と幻想のファシズム」(90年 村上龍 講談社文庫)

90年代を舞台にしているが、84年~86年の「週刊現代」の連載が元本だというから、30年以上前に書かれた本なのだと驚いたのは、昨日書かれたと言われても違和感のないことに、だ。アラスカを放浪していた青年”トージ”が政治結社”狩猟社”を立ち上げ日本を席捲するアナーキストともファシストとも呼べる主人公の数年を追った上下巻約1000ページの長編。こういう本を読むと、面白い本は快楽であり、麻薬みたいなものだと強く感じる。結局3日がかりで熱病のように読み耽った。連載小説らしく、同じ言い回しが何度も出てきたり、ストーリーの濃淡の激しさのためか、混乱したり、意味不明で途方に暮れたりもしたが、結局はキャタピラーで押しつぶしながら前に進む快感を十分に楽しんだ。著者紹介を見れば、未読の有名作品が多いのにあらためて気づいた。また、読みたい本が増えてしまった。
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