2023年8月20日日曜日

ロバの耳通信「ザ・レポート」

 「ザ・レポート」(19年 米)原題:The Report

9.11テロの捜査でCIAがテロリスト容疑者を尋問。その記録の一部がなくなっていたことに気付いた民主党上院議員がスタッフに調査を命じた<このとりかかりのところがやや曖昧>。新任スタッフ(アダム・ドライヴァーが好演)が約5年にわたりCIAの活動内容を精査し、CIAによる酷い拷問に何の成果もないどころか、それを続けていたことを調べ上げ報告する。上院議員はこれを公表しようとするが、共和党など相対する政権に妨害を受け、墨塗りだらけの報告書でしか公表できなくなり、同時に調査スタッフはCIAの陰謀で刑務所行きを宣告されそうになる。結局、民主党上院議員やほかの議員たちの頑張りにより、CIAの悪行が暴かれる。


CIAの悪行に知らんふりをした当時の政局メンバーたちも実名で語られ、最後は暴露されて報告書は公開され、ムショ送りされそうになった調査スタッフも無事だったという結末が出来過ぎの感はある。もっとも、事実が明らかにされず、調査スタッフも刑務所に送られるか暗殺されてすべて闇の中、の結末のほうがより強い問題提起にはなるだろうが、暗いばかりの作品だと世間に受け入れられないし興行収入も期待できないだろうからこういう終わり方にするしかなかったのか。

映画の中で繰り返しメッセージとして伝えられるのが、テロリストがどんな酷いことをアメリカ国民にしたとしても、CIAがその捜査中に拷問など非人道的行為があったという暗黒歴史を明らかににし、こういうことを繰り返さないことを肝に銘じておかないとアメリカの国際的な信用、政府に対する国民の信頼を失ってしまうーということ。きれいごと好きのアメリカのメッセージ映画らしく、格好良すぎの感もある。それにしても、明かさない真実が多すぎると思う、アメリカに限らずどこの国でも。権力者の悪行など証拠なんてないけれど、プンプン悪臭は感じてしまう毎日。鼻がマヒするまでの間ではあるが。

実話をもとに作られたという映画。アメリカ公開のあとは日本も含め公開されていないため話題にはなっていないようだが、必見の映画だと強く思う。

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