「ノア 約束の舟」(14年 米)原題: Noah
封切りの際、ポスターだけをチラ見して、ラッセル・クロウがやるノアなら、「例の」叙事詩風大作かなと期待も薄く見ることもなかったのだが、AmazonPrimeで画質のキレイなのをサブスクで見れるということで。ワキにジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンスと豪華メンバーを揃えれば、映画会社もモトを取るためにチカラを入れざるを得ないのだろうが、まあ良かったほうかな。
ノアの次男(ハム)を演じたローガン・ラーマンが凄かった。演技なのか天性なのかはよくわからないが、無邪気と邪気、笑顔と嘲笑。天使と悪魔の表情が、そうあの中国雑技団の百面相のようにクルリと変わる。ちょっとした拍子に、ゾッとするような狡猾さが見えるなんて、もっともニガテなタイプだけど、役者としては凄いヒトなんだろうな。
まあ、この作品、のプラス面で言えばCGの出来がよく楽しめたこと。従前の方舟にみんなをのせて万歳という能天気宗教モノじゃなく、人間の悪と善をしっかり考えさせるストーリー展開は単なる宗教映画のワクを超えていたこと。マイナスは”見張りの天使”というロボット風のものがあまりにも酷いキャラだったこと。2時間半の長編だが、迫力ある映像の連続は中々。2度見したいのは、怖いもの見たさのローガン・ラーマンか。
「修道士は沈黙する」(16年 伊・仏)原題:Le confessioni
G8財務相会議の前夜、会議の中心人物である国際通貨基金の専務理事ロシェの死体が発見される。ロシェは自分の誕生会に招待していたイタリア人修道士(トニ・セルビッロ)に告解していたらしい。財務相会議では弱小国を切り捨て、主要国だけ生き残るというような弱小国に非道な経済改革案が事前から周知・検討されていたから、会議メンバーは告解の中身を知りたがるも修道士は殺人の疑いをかけられても沈黙を通したため、会議メンバーは互いに疑心暗鬼となり、結局その改革案はお流れになるーといった短いストーリーにもかかわらず、韻を踏むように宗教的な暗示があちこちで用いられ、推理小説のような面白さを堪能した。映画の半分は、会議メンバーによる世界経済の裏操作の議論、半分は修道士によるバイブルを引用した警句の連続で、経済にもバイブルについての知識がないワタシにはやや難解さも感じられたが、闇の中を手探りで進むような、一種のお化け屋敷ツアーのように、人間のエゴが次から次へ曝け出され、消えてゆくサマは、やっぱり楽しかった。2度見でさらに楽しめそうな予感。
どうでも良いことでもあるのだが、オレがオレがのイタリア蔵相(実質イタリア映画だからしょうがない)、二刀流の発展家のカナダ女性蔵相、口の立つフランス蔵相やらの中で最も存在感のなかったのが日本の蔵相。矮小で言葉はボソボソ。ま、こんなものだろう。