2023年11月30日木曜日

ロバの耳通信「透明人間」「エウロパ」

 「透明人間」(20年 米・豪)原題:The Invisible Man

原作が同名の小説(1897年 H・G・ウエルズ)、「透明人間」(33年 米)のリブートだという。原作の方は幼い頃の挿絵入の児童小説などで読んでいたが、こういう「どんでん返し」のラストだったかなと。33年の映画も見ていないからなんともいえないが、見終わったらよくできた作品だとあらためて感心。

透明人間が主役の筈なのだが、映画の大半は天才科学者の妻役であるエリザベス・モスを中心になっていて、それがワタシの大嫌いなタイプだからか、ラストの謎解きまでただただ退屈。ホラー映画なんてメッチャいい女や儚げな少女が不可思議に追い詰められてゆくから同情もし、おもしろいのであって、オバンが逃げまどってもなーと、ソレだけが残念。

「エウロパ」(12年 米)原題:Europa

エウロパは木星の第2衛星の名前。エウロパに水があることが発見され、生物の存在を調査すべく各国から集められた6人の宇宙飛行士がエウロパへの旅に出た。ドキュメンタリー風に構成されているから、ドンパチもラブストーリーもない。宇宙船の内外は、実物を見たことがないからエラそうには言えないが、細かなところまでキチンと作り込まれ全く違和感はない。エウロパは絶対零度という超低温で氷に閉ざされた星。氷を掘ってサンプルを集め、さらにその下の水中にタコ様の生物を発見するも、探査船が故障し宇宙飛行士たちは帰れなくなってしまう。

重なる宇宙船の故障や修理中の事故などもPOVでドキュメンタリーのようにまとめられているから、いわゆるエンターテインメント映画と違い、見る方も落ち着いて見ることができた。

なかなか見応えのあるドキュメンタリー風映画。wikiによればフェイク・ドキュメンタリーという分類にはいるらしい。

2023年11月20日月曜日

ロバの耳通信「コードネーム:ストラットン」「ICHI」

 「コードネーム:ストラットン」(17年 英)原題:Stratton

イギリス海兵隊の特殊部隊(SBS)の活躍を描いたドンパチもの。国策なのだろうか、MI6といい、SBSといい、この手のヒーロー大活躍の英国物は飽きた。だいたいは、友人をテロリストに殺され復讐に立ち上がったヒーローが、上司(女性)の理解を得て大活躍、ハッピーエンドで終わるーというステレオタイプばかり。
主人公はゼッタイ死なないから安心して見てられるのだが、このマンネリ感なんとかならないものか。



「ICHI」(08年 邦画)

勝新太郎の「座頭市」(62年~89年)の主人公”市”を綾瀬はるか演じたリメイク作品。綾瀬はるかは大好きだし、暗い表情はほかの誰より不幸な過去を背負った瞽女(ごぜ)に似合っている筈なのだがなぜか感じる場違い感。脚本(浅野妙子)が良くないのか、監督(曽利文彦)に問題があったのか、とにかく主役が生きていない。邦画にはない感性の音楽が気に入ってwikiでチェックして外国人(リサ・ジェラルド、マイケル・エドワーズ)の手によるものだと知り、この映画の”冒険”を感じていたのに、だ。

大道具も小道具も手抜きすぎ、特に衣装なんか学芸会風の噴飯もの。何より口惜しかったのが配役。大沢たかお、窪塚洋介、中村獅童ほか錚々たる俳優をまさに”並ばせ”、友情出演やらお友達まで集まってもらっての顔見世興行の大げさな”芝居”が、この映画の失敗の根源。そうすると、やっぱり監督と脚本の”冒険”の責任が大きいのではないか。

綾瀬はるかは悪くない。

2023年11月10日金曜日

ロバの耳通信「ボックス21」「ハウス・ジャック・ビルト」気味悪かった本と映画

 「ボックス21」(09年 アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム ランダムハウス講談社文庫)

管理売春の犠牲者が入院している病院の霊安室に人質をとって閉じこもった。スウェーデンのクライムノベルでアンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレムだからもちろん明るい話ではない。このところ、北欧のシリーズものの暗いテレビドラマにはまってしまい、動画サイトで見ることのできるものもネタ切れ。ついにクライムノベルの禁断症状を起こし図書館に。外国文学の文庫の棚にまっしぐらで英米、ドイツ、・・を飛ばし「その他の欧州」の棚でコレを見つけた。著者名に憶えがあったから、何冊か読んでいるはずなのだがと、とりあえず借り出し読んだ。

映画だったら間違いなくR指定だと思われる500ページ強の長編で救いのない暗さと生臭さだったが、ラストの3行で思い切り頬をひっぱたかれた。おいおい、そりゃないだろう、と。久しぶりの揺さぶられるようなショックと絶望感。うーん、このシリーズ、もう一度おさらいせねば。

「ハウス・ジャック・ビルト」(18年 デンマーク・仏ほか)原題:The House That Jack Built

マット・ディロンが70年代に実在した連続殺人犯ジャックを演じていて、気味が悪いくらい役に合っていた。建築家を目指すジャックが口うるさい女をジャッキで殺すシーンは、うん、こういう目にあったらワタシも切れるだろうと思われるくらい同情したが、その後の殺人はやっぱり強迫性精神病というかサイコキラーだなと。クライムやホラー作品は好きだが約200分の殺人シーンの連続は気味悪く途中でメゲ、見終わってホッとした。

死体を積み上げて家を作るところや、地獄のの炎に落ちてゆくところはデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督の味。