2024年1月30日火曜日

ロバの耳通信「LOOPER/ルーパー」「ラスト・ガン 地獄への銃弾」

「LOOPER/ルーパー」(12年 米)

また、見てしまった。昔と違い、また見たいからといってDVDを買っておいたり、借りたりする必要がない。こういう「いい映画」だと、必ずどこかのネット動画サイトにアップロードされているから、それをクリックすればいい。だいたいは映画館かDVDで見ていて、切り取ったシーンにじっくり浸るような映画でもないし、何度も見ているから動画の質がどうかとかいうこともほとんど気にならない。気楽に楽しむだけ。

お気に入りの映画を場末の封切館のタバコの煙とエアコンの音、はたまた通路奥のトイレから流れてくる怪しげな匂いと一緒に一人で見てる感覚だ。映画好きにしかわからないか、まあ、いい。

とにかく、この映画はタイムトラベルを題材にしているから、一度見たくらいでは辻褄が合わないというか、スジを貧弱なアタマで整理できていないから、何度も見て矛盾の少ないマイストーリーに脚色しながら見る必要がある。もちろん、ストーリーは最高に面白い。ワタシが請け負う。出演は細いネクタイがメッチャ似合うジョセフ・ゴードン・レヴィット「スノーデン」(16年 米))、ワンパターンの演技ブルース・ウイルス、メッチャ色っぽいエミリー・ブラントとか、(知らないけれど)すごい演技だった子役とか、堪えられない配役。
いちど見ただけでは不思議感が払拭できず、何度も見るハメになった映画、たとえばM・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」(99年 米)とかもこのクチ。また、見よう。

「ラスト・ガン 地獄への銃弾」(14年 米)原題 By The Gun

安っぽい邦題がついているし映画評も最低だったが、大ファンの英俳優ベン・バーンズの主演ということで。アバタもエクボというのだろうが、ベン・バーンズはやっぱりいい。wikiでチェックすると、「ナルニア国物語」シリーズ(10年~)が代表作ということになっているが、どうもこういうファンタジーものは体質的に受け付けない。ベン・バーンズの真骨頂は悪役。「ラスト・ガン」では、望んでイタリアン・マフィアの組織の一員となったものの、友人や恋人との関係に苦しむ内気な若者を演じたが、ワタシが好きなベンは「Marvel パニッシャー」(17年 米)で主人公にガラス破砕機で顔をメチャメチャにされた敵役ジグソウを演じたベンだ。
「ラスト・ガン」の見どころというか、完全にワタシだけの好みなのだろうが、若者と恋人役レイトン・ミースターの出会いのシーンがいい。レイトン・ミースターはほかのいくつかの作品でも見たが、この映画の役が一番カワイイ。
驚いたのがラストシーンで、マフィアのボスを撃ち殺された若者の仇をとったのが、ベンの友人だと思っていたら、うーん。あまりに意外なラスト。ワケを考えていたら、ああ、これは悪の輪廻というか、終わらない物語なんだなと。


2024年1月20日土曜日

ロバの耳通信「ゲーマー」「オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜」

「ゲーマー」(09年 米)原題:Gamer

マインドコントロールされた死刑囚を使った戦争ゲームの主人公をいつものタフガイ、ジェラルド・バトラーが演じる。役に合ってるけど、いつもの不死身のジェラルドに飽き飽き。時代設定が2034年ということだが、VRゲームの進み具合を見てると生身の人間を使ったアバターゲームなんて、意外に早く実現する気がする。

昔、「セカンドライフ」というネットゲームが流行ったが、無限に増えてゆくアバターたちと意味のない話をしたり、街づくりにも参加したが実生活と同じ平凡の繰り返しに、あっという間に飽きてやめた経験がある。ゲームは普段できないこと例えば、犯罪や人殺しのインモラルができるから面白いのだ。

いまでも時々遊んでいるバイオハザードでは、ゾンビ相手にムチャ振りの戦いを仕掛け、あっけなく死んでリセットしてはまたゲームに参加している。遊んでいて気付くのは、アバターだから死ぬことに怖さはないから、夢中になって主人公と同化してゾンビ殺しに浸る。インモラルにハマってしまい、時間を忘れてしまう楽しさ。ゲームは麻薬。


「オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜」(13年 米)原題:All Is Lost

インド洋を航海中のヨットが漂流してきたコンテナと衝突。ヨットを修理したところに、今度はシケでヨットは転覆。次は、救命ボートでサバイバル。ノンフィクション得意の監督ジェフリー・C・チャンダーだからか、ハナシは淡々と進み、盛り上りに欠ける。

大金持ちジジイ風のロバート・レッドフォードは飄々と困難に立ち向かってゆくというと、サバイバル映画らしくないような感じだが、その通り、昔(石原)裕次郎がやった「太平洋ひとりぼっち」(63年 邦画)に近い。
こういう映画は主人公が困難に出会うごとに表情が変わり、極限状態の中で観客に焦燥感や失望を感じさせてくれるから面白いので、金持ちジジイの道楽の失敗程度で終わったりすると、なんだって面白くもなんともない。ハッピーエンドのラストシーンも余計だ。YouTubeの<サバイバル名作集>で見つけた迷作。


2024年1月10日水曜日

ロバの耳通信「空気人形」「許されざる者」

「空気人形」(09年 邦画)

ちゃんと原作もあるらしい(「ゴーダ哲学堂 空気人形」(業田良家 小学館))のだが、映画としてはいいところとあまりわからないところと。ラブドール人形役の韓国女優ペ・ドゥナが微妙にかわいい、板尾創路ほか多彩な配役がそれぞれに個性的、撮影監督(台湾のリー・ピンビン)のおかげで映像がキレイ、なにより原作からもってきたらしい、映画のキャッチフレーズにもなっている“心をもつことは、切ないことでした”とか、人形のしゃべる多くのセリフが象徴的で、賢くわかったフリをしたいのだが、本当のところは難しくてゼンゼンわからない。若い頃、サルトルやカミユをわかったフリをしていつもカバンに入れていた、そんな気分に近い。ゼンゼンわかっちゃいなかったのだ。

監督・脚本・編集の是枝裕和については作品により好みのわかれるところだが、難しい作品をこれだけまとめた力は買ってもいいか。ただ、また見たいと思う映画じゃなかった。

「許されざる者」(13年 邦画)

オープニングの映像や音楽でまずドギモを抜かれた。これ、本当に日本映画かよと。配給はワーナー・ブラザーズだが、監督(李相日)や脚本など製作スタッフこそ日本人は少ないものの、ハンス・ジマーばりの音楽(岩代太郎)や撮影も素晴らしく、ハリウッドの大作にも引けをとるものではなかった。配役も渡辺謙、柄本明、柳楽優弥、佐藤浩市ほか今こういう作品を作るにしてもこれだけのキャスティングはできないだろう。
特に記憶に残ったのは遊女役の小池栄子。ボロ衣装に浅黒い顔から射込んでくる双眸の鋭さ、最近はバラエティなんかにも出て柔和な表情を見せることも多い小池栄子も昔は確かにこういう女優だったと。

「許されざる者」はアメリカのアカデミー作品賞を受けた同名の映画(92年 米 クリント・イーストウッド監督、主演)のリメイクだという。
個人的な意見だが、オリジナルよりこの日本映画のほうが、断然良かった。両方とも見てはいないカミさんに言わせると、そりゃそうでしょうと。観客の自分と映画の距離感が違うと、うーん、確かに。