
13歳の桜大(おうた)は”不思議”に満ちた黒沼村でなんでも知ってる”センセイ”たくさんの友達と暮らしている。そこには”禁忌の場所”があったり、”森の妖精”もいる。全編フシギなのに優しさにあふれた物語。
イナカからトカイへ出てきたワレワレはイナカがいつも懐かしくていい思い出ばかりのものではないことも知ってるけれども、懐かしさを感じるところがたくさん。
「妖怪アパートの幽雅な日常」(11年 講談社文庫)でデビュー以来”不思議”を題材に書いてきたこの作家、51歳の若さで亡くなっているから、もうこの優しい”不思議”には会えないのだ。
「うつくしい人」(11年 西加奈子 幻冬舎文庫)
同じ著者の「サラバ!」(17年 小学館文庫)では、書評が良い割にはどうもついて行けなかった思い出があったのだが、この「うつくしい人」の表紙のイラストが気に入ったのと、裏表紙の釣りに惹かれた。他人の目が気になってビクビク暮らしをしていたアラサーの女性が、退職を機に離島のホテル滞在することに。変わったバーテンダーや客のドイツ人との出会いとエピソードは、いかにも作り事じみていて気に入らなかったが、このアラサーのホテル暮らしの解放感と閉塞感という正反対の感覚は、ホテル暮らしが長かったワタシには共感できた。「うつくしい人」は、学生時代の同級生や、”重い”姉のことか。西加奈子、ちょっと見直したかな。
「あなたの人生、片付けます」(16年 垣谷美雨 双葉文庫)
断捨離コンサルタントが、片付けられない人たちの指導をする。”部屋を片付けられない人間は、心に問題がある”というのがこのコンサルのウリ文句。うん、よく理解できる。そのノリで、困った人たちの”心の問題”を、バッサ、バッサと片付ける。カミさんから、読んでと渡された意味も十分わかっているが、片付けなんかで悩むより、「飛ぶ鳥跡を濁しっぱなし」にしようかととも思ってみたりする。

さまざまな家族の抱える問題を一気に片付けることができるセンセイとよばれているウチのおばあちゃん。スーパーおばあちゃんを銭形平次や大岡越前のようなヒーローにするためのストーリーがわざとらしいのがちょっと気になったが、まあ、面白いからいいか。