韓国人の描写をさせたら、岩井志麻子ほどウマい作家はいないのではないか。「日本人よりも韓国人の男性と付き合った数の方が多い」と公言しつつ年下の韓国人の夫、愛人を持っていると、それだけでもすごい。
ワタシが生まれたところは、駅裏に在日の部落があって、親たちにとっては差別の対象、ワタシにとってはなにか隔絶された島。近づいてもいけないといわれて育ち、それでも小学校のクラスにいた色白の女の子はその部落の出身だとクラス中が知っていたのだけれども、イジメはなかったと思う。幼すぎたワタシが気づいていなかっただけかもしれないが、ワタシはその子をいつも遠くから見て、憧れていたような気がする。学生時代、トナリの女子寮に住んでいた髪の長い優し気な朴さんと、すこし話をして以来、韓国女性とは知らない国のアイドルであった。その後、韓国に何度も行って、韓国女性のみんなが色白で髪が長く、おとなしいひとばかりではないということを再認識したとき、初恋の思い出を汚されたような気がしたものだ。
「死後結婚」(05年 岩井志麻子)は怖い物語である。主人公の京雨子が慕う沙羅は在日の設定。色白の端麗とも妖艶とも異なる説明しがたいが、ワタシにとってステレオタイプの韓国女性。岩井の小説はどれも恐怖と性愛にあふれていて、出てくる女性が、少女から老婆に至るまで、とにかく怖く、心惹かれるのだ。食われるとわかってて、求愛してしまう雄カマキリを笑っている人間も同じか。
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