2016年9月8日木曜日

ロバの耳通信「月の上の観覧車」

「月の上の観覧車」(荻原浩 11年 新潮社 )どれもが珠玉というのだろうか、短編集のどれもが切ない。「胡瓜の馬」では、里帰りした同窓会で、失くした彼女とのことを知る。「ハの字の眉」と「な」がなんとも切ない。こんなわけのわからことを書いても伝わらないのはわかっているが、どうしてもココに書いておきたかった。昔の思い出なんて、本人しかわからない、否本人でさえ理解できていないことの積み重ねなのだ。

過日、焼きスルメのパックを買った。ワタシは歯が悪いのでふだんはほとんど買うこともないのだが、カミさんが食べたいと。口に入れて浸みだすスルメの味が、唾液と混じってなんだか旨い。ほとんど噛んでいないので、口の中でふやけたスルメはいつまでも旨みを口中に広げている。昔はよく食べたものだと、思い出し、いつまでも飲み込めないでいる。なつかしさに涙が出た。

恋と言うには幼すぎる思い出やそのあとの青春の苦さはいつまで忘れないでいられるのだろうか。残された時間がだんだん少なくなって、ほかのいろいろなことを忘れてしまっているのだが。

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