「復活祭」(14年 馳星周 文芸春秋社)
小説はエンターテインメントでいいと思う。金、酒、暴力、ドラッグ。馳らしい小道具を揃えたのに、舞台とした「株式公開」にディテールもリアリティも全くなく、その上で繰り広げられる男と女の騙し合いがなんとも空々しいものとなってしまった。
本作の前編である「生誕祭」(03年)では舞台が「地上げ」で、欲だけに焦点を当てても連日の新聞報道で、身の回りで起きている実際の地上げがほぼ力づくだけで起きていたことを多くの読者は知っていたから、その舞台に納得しそこで繰り広げられる男と女の騙し合いに思い切り感情移入できたものだ。
「株式公開」を舞台にするには馳の勉強が足りなかったのではないか。中身のない会社で法外な価値を付けて公開はできないし、幹事証券会社を簡単に抱き込むことなどなどできはしない。そして、舞台は違えど夜の女たちの復習劇も2番煎じは飽きる。数多くの馳作品を読んできて「いままで、すべて」面白かったのに。うーん、「生誕祭」でやめておけばよかったのに。
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