「出版禁止」(17年 長江俊和 新潮文庫)
出版社に勤める男が心中事件を調べていくうちに、心中の片割れの女と関係を結んでしまい、ついにはその女と心中することになる。実際に起きた事件を追いかけるというドキュメンタリーという形式をとっているから、ノンフィクションのように思えたので、それらしい心中事件をググってみたが見つからない。書評やら読書ブログから、この心中事件の元のハナシを探したのだが、結局わからなかった。著者は映像作家というから、あちこちで起きた心中事件からハナシを組み合わせたものかもしれない。
L'ASSASSIN DE CAMUSという副題がついている、カミユの刺客。表紙も凝っているし、登場人物の名前はアナグラムになっているなど、著者の遊び満載。著者の遊びは読者が同調できたら、一緒に遊べるのだが。
「アトミック・ボックス」(17年 池澤夏樹 角川文庫)
500ページ弱、一瞬の息抜きなしで、ジェットコースターで駆け降りる感。エンターテインメント小説は、こうでなければ。
父が開発に携わっていた国産原爆”あさぼらけ”の秘密を、死にゆく父から受け継いだ娘が、警察に追われる。逃げ惑うのでなく、巨大権力を持つ追っ手のウラを欠いて泳ぎ、走り回る。トム・クルーズの「ミッション・インポッシブル」の世界だ。
”あさぼらけ”を必死で隠蔽しようとした国家権力は、ソレが北に流れ北朝鮮の核開発の成功のカギとなったことを認識していた、とまあ、社会性の高い話題をストーリーにしていて、追う、逃げるの説得力が増している。
こういう面白い本に出合うと、まだまだ読み足りないなと。
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