2023年3月10日金曜日

ロバの耳通信「無理」「銀行占拠」

「無理」(12年 奥田英朗 文春文庫)

合併したばかりの地方都市の生活保護担当の市役所職員の周りで起きる普通のこと・・でもないか、ナマポの虚偽申請、主婦売春、オタクによる女子高生誘拐、贈賄に収賄、・・いまも続いている社会問題をテンコに盛り、読者の前に突き付ける。裏表紙の釣りは”どん詰まり社会の現実”とある。そうなのだ、どう進んでも結局、皆どん詰まり。それが予想できる。だから、読むに連れて息苦しく、もういいやと思いつつも、所詮ヒトの不幸だと思っているから快感も。やっぱり最後のカタルシスまで読んでしまった。
こういう小説もアリだと思う。ハッピーエンドのための辻褄合わせなんかもナシ。だから、”どん詰まり”のまま。読後感のストレス100%・・。

「銀行占拠」(10年 木宮条太郎 幻冬舎文庫)

行員が立てこもった信託銀行。システム侵入で、シャッターも開かない、ATMも使えない。不祥事を公表するぞと脅かされ、うろたえる経営陣。池井戸潤(「半沢直樹シリーズ」(07年~文春文庫))の銀行モノを彷彿させる面白さ。まさに映画のような緊迫の展開。惜しむらくはラスト、これはないんじゃないかな。裏ですすんでいた信託銀行の解体と買収で、事件にならずリセットとかぁ、そこだけ何度か読み直したのだがイマイチ。信託銀行なんか、貧乏人の一般人は関係ないところではあるけれど、こういう終わり方ってあるのか。
まあ、予想と違ってていただけということなのだろうが、なんだかね。銀行の隠された不祥事が世間にぶちまけられ、銀行は崩壊とか、犯人は正義のヒーローとしてもてはやされる、なんてほうが面白かったか。

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