「検屍官」シリーズ(92年~ パトリシア・コーンウェル 講談社文庫 以下同じ)で最初に読んだのは多分「死体農場」(シリーズ5作目 94年)。面白さにすっかりはまってしまい、出先で本屋を見つければコーンウェルの本を求め、それ以来熱病のように講談社文庫の青い背表紙(海外ミステリー)を追いかけていたのが20年前。仕事に追われる日が続き、入院。会社もいくつか変わっていまの暮らしに落ち着き、いつの間にか遠ざかっていた図書館の青い背表紙の群れなかにこの「変死体」(11年)を見つけた。表紙も読んだ記憶もない。早速借り出して、裏表紙の解説を読んだら、”緊迫のシリーズ第18弾”と。18作もでているのかの驚きとともに著者紹介のコーンウェルの写真を見たら、すっかり容貌が<悪い方に>変わっていて、浦島太郎の感。ちなみに、wikiのコーンウェルの写真は格好良くて、「検屍官」シリーズの主人公のケイ(主人公の検屍官の名前 ケイ・スカーペッタ)とダブらせていたのに。

「変死体」を読み始めてすぐに気づいた。昔のケイじゃない。馴染みのFBI捜査官のベントンと結婚していたのはいいとしても、強迫観念にあらぬことばかりを口走るただのヒステリーの中年女じゃないか。ガスの出る怪しげなナイフとか、マイクロドローンとか、軍用ロボットとか聞きかじりの<あたらしモノ>を消化せずに盛り過ぎ。トリック満載で読者を迷わせるには成功したが、種明かしの説明のつかなかったことを、死んだヤツにおっかぶせて口拭うなんて、昔はなかったぜ。コーンウェルおばさん、儲けすぎて狂ったか、ゴーストライターに丸投げしたか。
読んでいて気付いた違和感はストーリーだけでなく、文章もなんだか。で、もう一つ気付いた。訳者が違うよ。で、本格的にネットで調べたら、シリーズは24作目「烙印」(18年)まであって、ワタシのなじみの訳者(相原真理子)はすでに亡くなっていて16作目「スカーペッタ」(09年)からは新しい訳者(池田真紀子)に代わっていると。コーンウェル・相原真理子コンビでは「検屍官」シーリーズ以外でも、警察官アンディ・ブラジル シリーズの「スズメバチの巣」(98年~)、捜査官ガラーノ シリーズ「捜査官ガラーノ」(07年~)など、みんな手に汗握る面白さだったのに。そうかそうか。
15作目「異邦人」(07年)までは、相原真理子訳だというから、まずはそこまで未読作を遡って、読んで見よう。16作目以降のコーンウェルの「棚卸」はそれから。
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