
勧善懲悪、ハッピーエンドはキライじゃないが、ずっとこれだと飽きる。文章もうまいし、ストーリーを組み立てる素材というか、今回の「下町ロケット」でいえば、大企業・町工場の描き方、水素エンジンのバルブシステム、銀行と企業の駆け引きなどのディテールもおろそかにしていないから臨場感に引き込まれてしまうが。解説を読むと、江戸川乱歩賞受賞の「果つる底なき」、大企業の横暴を描いたという「空飛ぶタイヤ」、吉川英治新人賞受賞の「鉄の骨」などなど、紹介されているどの作品にも期待が膨らむ。飽きた、と期待のせめぎあい。読みたい作家はまだまだいるからね。
「花の下にて春死なむ」(01年 北森鴻 講談社文庫)
裏表紙の”日本推理作家協会賞”の釣りに惹かれ読み始めた連作6編。著者の作となる俳句やら、気の利いたビアバーのマスターとの洒落た会話など、著者自身が楽しみながら書いたに違いないミステリーは、ひとひねりもふたひねりもしてあって謎解き好きには堪えられないかも。
初めての作家だが、この作品は、ただ、好みに合わない、訳知りマスターが凝った料理の能書きを垂れながら謎解きをして見せるなんてのは。で、巻頭を読んで、中盤を拾い読みして、ヨイショだらけの郷原宏の解説ー実は、この郷原宏が好きじゃないから、坊主憎けりゃ・・になってるかも、と北森には申し訳ない気もするーで勧められた巻末短編も読みだしたが、途中でコンジョウが尽きた。
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