「ウツボカズラの夢」(11年 乃南アサ 双葉文庫)
乃南アサ。今まで何度も手に取った作家なのに、ちゃんと読んだことがあまりなかったような気がする。直木賞を獲っている「凍える牙」(08年 新潮文庫)さえ途中で何度も放り出しながらようやく読み終えた記憶がある。
「ウツボカズラの夢」は、母親の死去と父親の再婚で居場所のなくなった高校を卒業したばかりの娘ミフユが親類のおばさんを頼って上京。おばさんの家もバラバラな家族。居候からいつの間にかお手伝いさんのになり、おばさんのダンナと関係を持ち、おばさんが家出したあとはおばさんの息子と仲良くなり、結局そこの嫁に収まってしまう。著者はどうも、ミフユを食虫植物のウツボカズラに例えたのだと思ったのだが、解説(大矢博子)の”ウツボカズラは誰か”の問いに、考えこんでしまった。本当のウツボカズラが誰だったかは解説の最後に書かれていて、あーそうだったのかと思わず膝を叩いてしまった。
面白かったよ、「ほぼ初めての」乃南アサ。
「星々の舟」(06年 村上由佳 文春文庫)
直木賞受賞作の短編連作。巻頭の「雪虫」が特にいい。禁断の兄妹愛、妻子ある男ばかりを愛してしまう女、兵隊と慰安婦の恋。
物語のホネになっているのが形こそ違うがすべて男女の恋物語。男女の愛は生きる目的の要素になるとは思う。しかし、それがすべてだと並べられると食傷してしまう。
禁断の兄妹愛だけに、あるいは、個々の恋物語だけにしてくれれば、その情感により感動できたのではないか。共感はしても、究極と感じられる重い恋物語を次々に受け入れることなんて、私の年齢ではムリだと実感。村上由佳は私には刺激が強すぎるのか、それとも連作にヤラレたのか。
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