「スカーフェイス 警視庁特別捜査第三係・淵神律子」(18年 富樫倫太郎 講談社文庫)
富樫倫太郎のミステリー小説は何冊か読んできたがあまり好きじゃない。レトリックが好きじゃないし、こねくり回したストーリーの謎解きをするのは疲れるし、達成感も感じられない。
それでも読み始めたのは、書棚の主のように長く読まな
いままに放置の本だったし、コロナ騒ぎで紙の本が枯渇し始めていたという理由。電子本はかなり貯めてあるのだが、眠る前にフトンにはいって仰向けで読むことのできる利便性は、文庫本にかなう物はない。「スカーフェイス」(傷のある顔)という名前も、ツリのハードボイルド感、好きな警察小説、しかも女刑事モノであること、読みやすい印刷文字の講談社文庫と結構アドバンテージがあった筈なのだが。
連続殺人の犯人捜しの550ページの文庫本に数日費やした。やっぱり作りすぎ。やっとこさ読み終えた感。事実は小説よりも奇なりとか言うが、”奇なり”も過ぎると作り物感に疲れてしまった。ここまでトリックを組み立てて読者を最後のページまで引き付けたのはエライと思うが、真犯人と犯行の動機を明かされても不自然さに、そりゃ、ないだろーと読み終えた爽快感ゼロ。
やっぱり、相性が悪かった富樫倫太郎。
「GO」(03年 金城一紀 講談社文庫)
著者が在日韓国人である自身の友人たち家族を、悪ぶることも善人ぶることもなくイキイキと描いていて好感が持てた。登場人物がみんな愛すべきいいヤツなのがいい。良家のお嬢さんである桜井との恋物語がいい。良い話すぎて、カミさんいわく、”こういうのって、東大出のお父さんからの反対とかでうまくゆかないんだよねー”と。ウチなんか、両家ともビンボーニンの家族だったし、お互いイナカの出身だから揉めなかったけど、カミさんの危惧はわかる気がする。とはいえ、良い作品だった、久しぶりに。
直木賞受賞作だと、読み終わって知った。映画化(01年 邦画)もされているらしい。主人公の杉原役が窪塚洋介はいいけど、桜井役が柴咲コウだと。なんだかイメージ違うよね、とカミさんも同意見。
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