2022年10月10日月曜日

ロバの耳通信「むらさきのスカートの女」「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」

「むらさきのスカートの女」(19年 今村夏子 朝日新聞出版)

雑誌の書評か何かで、面白いと。直木賞受賞作とも。コロナ騒ぎの中、長い図書館の予約待ちのあと、ガラガラの図書館に何カ月ぶりに出かけ手に入れた。なのに、だ。この腹立たしさを誰にぶつけよう
か。
こういうのが今のハヤリなのか。作品の好き好きは個人の趣味だから、単に自分の趣味の悪さや感性の低さを呪うしかないのだが、これはあまりに酷かった。直木賞だって、これが。


「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」(12年 辻村深月 講談社文庫)

辻村深月。初めて読んだ本、たぶん。母親を刺して行方不明となったおさな友達の跡を追う雑誌記者の物語。地方都市の人々の交流の濃さ、適齢期の女友達たちの微妙な距離や出産時期の不安定な心身についてなど、女性の視点でなければ到底書きえないところが、新鮮かつ気味悪く感じた。島本理生が解説で書いた”女同士の友情は、とうてい友情とは呼べない”ことを納得。ミステリー小説の体裁をとりながらも、犯人も事情も分かっているから、読者は迷うことなく葛藤や不安に思い切り浸れる。

テレビドラマ化の話もあったようだが、裁判沙汰まで縺れこんでボツになっているから、映画化も無理だと思うし、配役も悩むところだがこれだけの作品、ぜひ映像化してほしい。

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