2022年12月30日金曜日

ロバの耳通信「散歩する侵略者」「大コメ騒動」

 「散歩する侵略者」(17年 邦画)  

やたらと動作やセリフが大きくて舞台劇が原作かなとあたりをつけていたら、劇団イキウメの舞台(前川知大 05年~)だと。昔、どこかに見に行った素人集団によるアングラ舞台を思い出した。

とはいえこの映画、長澤まさみ、松田龍平ほかキャスティング(だけ)は豪華だったから、これだけの役者を揃えるんだったら、もっとなんとかならなかったかなと。原作ができていないのか、脚本が甘いのか、ストーリーに一貫性も起承転結もなく、ロケーションもいかにもお金がかかっていないところばかりで、リアリティーもクソもない。まあ、地球人が宇宙人に侵略されかかるという滑稽なハナシだからスジもリアリティーもあったもんじゃないが。

ただ、邦画界も仲良し有名俳優を集めてなんか作れば売れると思ってると、ダメになるよ。個人的に長澤まさみ、松田龍平の大ファンだから、メが厳しくなっているのかもしれないけれど。

思ったのは、こういう演劇はオシマイだ、もう映画にしようとか考えないでほしいと。

「大コメ騒動」(19年 邦画)

富山の中の黒歴史といわれている大正7年に起きた米騒動を題材にした映画。ボスキャラ役の室井滋、夏木マリほか豪華キャスト汚いおかか(女房)たちも頑張ってる感も強かったけど、最初から最後まで、ギラギラ眼の井上真央が圧巻の演技だった。美人じゃないけど、圧倒的な存在感にまいった。

前述の「散歩する侵略者」のつまらなさとこの映画の面白さの違いはなんだろう。

2022年12月20日火曜日

ロバの耳通信 「西部戦線異状なし」「アウトサイダー」「ディープ・スペース」

 「西部戦線異状なし」(22年 独)原題:Im Westen nichts Neues

リメイクながらNetflixの新作ということで公開を楽しみにしていたのは、それぞれ何回も見た30年のアカデミー賞作品、79年のゴールデングローブ賞作品(いずれも 米)の印象が強く残っていたから。

前2作品に比べ、ずっと直接的で残酷。オープニングと、エンドロール前の山の風景だけが脈絡のない暗い映像で、映画が始まると息をつくひまもなく、映画に縛り付けられた。引きずるような音楽が怖さを盛り上げる。

見終わったらすっかり疲れてしまって、2度見をする気力が残っていなかった。とはいえ、いつかまた見ることになるのだろう。喩えとしては良くないが、恐怖は一種の快楽なのだ。

ロシアとウクライナの意地の張り合いが世界戦争になろうとしていて、否応なく底なし沼に引き込まれている気がする。


「アウトサイダー」(18年 米)原題:Outsider

元米軍のニック(ジャレッド・レト)は、刑務所でヤクザの清(浅野忠信)を助けたことで次第に日本の裏社会に足を踏み入れていく。Netflixが描くと、日本のヤクザはこう写っているのか。米軍将校が日本の刑務所にはいっていて、ヤクザの世界で台頭してゆくなんて噴飯モノのストーリー展開。ヤクザの親分(田中泯)やヤクザの兄弟(キョウデー椎名桔平)もあまりにもステレオタイプ。日本ヤクザの指詰め儀式もただただスプラッタえいがのよう。配役が、主役を除いてほぼ日本人だから対象視聴者はアメリカ市民ではないだろう。きっと古い日本人は一昔前の東映の任侠映画などの感覚で古き良き時代を反芻するのだろうが、若い人もこういうの見ないだろうな。うん、Netflixにしては面白くない作品。

同名のフランシス・コッポラ監督の名作(83年 米)のことを思い出した。あっちは良かった・・・。

「ディープ・スペース」(18年 カナダ)原題:Deep Space

ストーリー展開も、配役も、音楽も文句なし。CGの美しさが特筆すべきの「宇宙生物との接遇モノ」なのだが、この作品も他と同じで”宇宙人はいたのか”と疑わせる中途半端な幕切れ。消化不良は体に悪い。

うーん、ラスト近くまで、宇宙船が故障したり、食料が足りなくなったりでハラハラドキドキを楽しめたのになー。


2022年12月10日土曜日

ロバの耳通信「トゥモロー・ウォー」「グッド・ネイバー」

 「トゥモロー・ウォー」(21年 米)原題:The Tomorrow War

うーん、タイムトラベルにエイリアンとの戦い。安易な邦題に似つかわしく、つまらない映画。新型コロナの蔓延のためパラマウントからAmazonに配給権を売られて、Prime Videoで配信とwikiに説明があったけど、映画館で楽しめる映画じゃない。

グラフィックはキレイだし、エイリアンの出来もソコソコだけど、ストーリーが雑だから入り込めないのよね。制作・総指揮、主演クリス・プラットだというから、すこし売れてきた俳優が自分でまるごと作ってみるかと作った映画なんだろう。

きっと、次作は監督も脚本も自分で、とチャレンジするんじゃないかな。テレビなんかでもよく売れているらしいクリス・プラットは覚えやすい甘いマスクだけど、どんな作品でも同じ印象。個性みたいなものがないからもういいかなクリス・プラット。



「グッド・ネイバー」
(16年 米)原題:The Good Neighbor

アメリカの高校生ふたりが近所の気難しい老人にポルターガイストを仕掛けるという予告から、ああ、お決まりのアメリカ青春グラフィティーかと見はじめたら、コレが結構ドキドキのミステリー・サスペンス。盗撮カメラの映像の中の老人の動きを追うシーンがほとんど謎解き。よくある、若い女のプライベートを覗き見するイヤラシい動画と違い、ジェームズ・カーン演じる老人に、将来の自分の姿を重ね合わせて寒々しい思いをした。

この作品は、とんでもないオチで観客を驚かせるウリだからこれ以上書かないが、おヒマならどうぞ、かな。ポスターの釣り文句は当たってない。