2023年12月30日土曜日

ロバの耳通信「ハッキング・アイ」「ディストピア パンドラの少女」

 「ハッキング・アイ」(12年 仏)原題: Aux yeux de tous

イスラム過激派によると推定されたパリ駅での爆破テロ。映像記録が残っていないという当局の発表に疑問を抱いたパソコンオタクの青年<アノニマス26>が、ハッキングにより監視カメラの映像を片っ端から調べ、真犯人とその背景を探し出す。ヨーロッパの監視カメラの普及を見れば、ハッキングの困難さは別にしても、こういう捜査も当たり前にあるんじゃないかとも思うが、約10年前だよ。画面のほとんどが監視カメラの画像だから、ドキュメンタリーフィルムを見ているような臨場感がハンパなかった。

爆破テロなんかが起きると、イスラム過激派よるテロとして片付けられているようだが、この映画のように政治家たちの謀略とかが裏に隠されたままになっているんじゃないかな。


「ディストピア パンドラの少女」(16年 英)原題:The Girl with All the Gifts

はやりのゾンビ映画かと軽く暇つぶしのつもりで見てたら、食事時間が惜しいくらいクギ付けに。原作(「パンドラの少女」(16年 マイケル・ケアリー 東京創元社)もいいのだろうが、ゾンビのソレらしさや荒廃した都市の風景などが良くできていてひさしぶりにいい映画に逢ったとちょっと感激。製作陣やキャスティングからはB級といってもいいくらいなんだけど、とにかく面白かった。

未知の細菌で感染者は人肉嗜好のゾンビに。妊娠中に感染した母親から生まれた子供たちが高い知能や身体能力を持つことに注目した政府は、子供たちを軍事施設に押し込め教育しようとし、医者は子供たちの脳や脊髄からワクチンを抽出しようとする。そんな子供のひとりの少女と女教師、医者、軍人たちが力を合わせ食糧などを探しながらゾンビたちの群れを横切って、安全地帯に逃れようとする。

無人スーパーでの宝さがしとか無音で避けながら移動とか、まあ、今やゾンビ映画のよくある展開なのだが、ロールプレーンゲーム感覚で映画をたっぷり楽しんだ。


2023年12月20日水曜日

ロバの耳通信「エネミーライン ドイツ軍大包囲網からの脱出」「クライム・ボーダー 贖罪の街」

「エネミーライン ドイツ軍大包囲網からの脱出」(19年 カナダ)原題:Beyond The Line

第二次大戦末期、英空軍の撃墜王ベイカー(クリス・ウォルターズ)は独機との戦いで墜落。パラシュートで降下したところが独軍がウジャウジャの森。偶然出会った米兵に助けられ独軍と戦いながら脱出する。ベイカーは撃墜王にもかかわらず、地上での戦闘経験のない根性ナシ。米兵は冷酷無上の殺し屋風。

ふたりの兵士を対比させたストーリーは興味深かったが、米兵に撃たれ、バタバタと倒れてゆく人形の兵隊のような独兵の描き方が不思議。まあ、反戦がテーマなのだろうがソコも伝わってこない。敵地の森の中の設定とはいえ小声の英国訛りの英語は聞き取り辛く、字幕がなければどうしようもなかったろう。

プロローグとラストの墓参りのシーンはトム・ハンクス主演「プライベート・ライアン」(98年 米)のソレとそっくり同じ。パクリもここまでくると、なんだかね。

同名の「エネミー・ライン」Behind Enemy Lines(01年 米)も撃墜された航空士(オーウェン・ウィルソン)の脱出劇を描いたもので、監督がジョン・ムーア、共演にジーン・ハックマンとかもいてメッチャ面白かったのに。

「クライム・ボーダー 贖罪の街」(14年 フランス・ベルギー・アルジェリア)原題:Two Men In Town

こんなに哀しい映画はあまりないんじゃないか。
保安官助手を殺した罪で18年の服役を終え仮釈放となった男(フォレスト・ウィテカー)が、メキシコ国境に近い砂漠の街で懸命に更生の道を歩もうとする。もちろん世間は簡単に許してくれない。差別され、虐げられて最後は行き場のない怒りに爆発。

男に部下を殺されたトラウマに今も苦しみ、憎しみで対峙する保安官(ハーヴェイ・カイテル)、主人公と保安官が原題のふたりの男。

保護観察官に英女優ブレンダ・ブレシン、昔のワル仲間にプエルトリコのルイス・ガスマン、男が思いを寄せるメキシコ女役にドロレス・エレディア、母親役にエレン・バースティンなどマイナー作品とは思えない錚々たる配役。登場人物の全員が過去を引きずって哀しみに生きている。もちろん、幸せな結末なんてありえない。

フランス映画「暗黒街のふたり」(73年 アラン・ドロンとジャン・ギャバンの刑事)のリメイクだそうだが、スジは似てるものの映画の印象は全く違う。どっちも哀しい映画なのだが、うまく説明できん。


2023年12月10日日曜日

ロバの耳通信「ホース・ソルジャー」「ヘル・トラップ」

 「ホース・ソルジャー」(18年 米)原題: 12 Strong


アメリカ同時多発テロ事件直後。タリバン軍と戦った米陸軍特殊部隊の活躍を描いた同名のドキュメンタリー作品(ダグ・スタントン 18年 ハヤカワ文庫)の映画化。

同時多発テロ後の初の反撃成功の軍事作戦を描いているから製作がジェリー・ブラッカイマー、キャスティングにクリス・ヘムズワース、マイケル・シャノン、ほか錚々たる役者を揃え、アメリカの気合が感じられる作品。言ってみれば、賊軍タリバンを官軍米特殊部隊が叩く映画という、主人公が死なないチャンバラ映画と同じ構図なのだが、官軍鼓舞の娯楽作品としてみれば、文句なしに楽しめた。

「ヘル・トラップ」(11年 フランス)原題:L'ils

第二次大戦中、ナチスから逃れた3人の男の乗った飛行機が墜落。たどり着いた南海の孤島で巨大な穴と冷凍カプセルに眠る美女を発見。イメージ的には江戸川乱歩の冒険物語と迷路を進みながらいろいろなものを手に入れて進んでゆくロールプレイングゲームを混ぜ混ぜにしたストーリー展開。あまりのバカバカしさに惰性で見ていたが、最後はどうなるかと結局最後まで見続けてしまった。

穴や隠し扉、巨大な蜘蛛や隠された実験室やらに結構ドキドキし、その夜は夢まで見る始末。ロビンソンクルーソーの冒険物語や地底探検、ドクターモローの島などなど、胸躍らせて少年雑誌の挿絵に夢中になっていた子供時代を思い出した。とにかく、面白かった。