2026年1月19日月曜日

ロバの耳通信「ザ・プレデター」「オーシャンズ8」

「ザ・プレデター」(18年 米)

「プレデター」シリーズの4作目。「ザ」をつけた安直さそのもので、目新しいものはない。主人公となる米兵士の息子を目立たせたり、コメディ味付けの兵士たちを活躍させたりで目先を変えたつもりだろうが、第1作のシュワちゃんが戦った「プレデター」(87年 米)のゾクゾクする怖さや気味悪さはどこにもない。
4作のほかに略称「AVP」「エイリアンVSプレデター」(04年 米)、「AVP2」(06年 米)とか際物も作ってくれたが、どれもつまらなかった。
「エイリアン」シリーズ(79年~)も、第1作の衝撃に比べ、まあ面白かったのは4作目まで、5作「プロメテウス」(12年)、6作「エイリアン:コベナント」(17年)と、ドジョウは何匹もいないことをハリウッドも気付いて欲しい。

「オーシャンズ8」(18年 米)

「オーシャンズ」シリーズでは番号は作品番号じゃなく、集団窃盗団のメンバーの数。「8」の指揮をとるのはサンドラ・ブロック。かっぱらうのはニューヨーク美術館のガラパーティーでカルチェのダイヤの首輪。

サンドラ姉さんの万引きシーンは、うなるような手口。高級化粧品店で品物をいくつか掴んで、レジに持って行き返品したいと。買い上げ伝票の控えもカードの控えもないから返品は不成立。で、返品はしないと、お店の袋だけもらってそれに入れさっそうと出る・・うーん、なんかやれそうかなとマジ思った。
「7人の侍」「黄金の7人」と同じく、窃盗団の各メンバーはハッキングやら、スリやら特殊技能を発揮。大好きアン・ハサウェイも出ていて楽しめた。
サンドラ姉さん演じたデビー・オーシャンが大ヒット作「オーシャンズ11」(01年)、「13」(07年)の主人公ダニー・オーシャンの妹の設定。姉さん女だらけの「8」が当たったので「9」を狙っていると。楽しみ。

2026年1月4日日曜日

ロバの耳通信「M8 エムエイト」「教場」

「M8 エムエイト」(04年 高嶋哲夫 集英社文庫)

高嶋のパニック物は面白い。これも首都直下地震が東京を襲うというストーリーを若い地震学者を主人公に据えて書いたのは良かった。かなり違和感があったのは首相や国会議員、東京都知事など為政者の動きだ。彼らが一介の若いポストドクターの青年に意見に耳を傾け、首都戒厳令など素早い対応をとることで被害を最小限に抑えるというカッコイイ物語になっている。
「日本沈没」(73年 小松左京 光文社カッパ・ノベルス)の時も多くの学者や官僚たちが頑張る姿が描かれた。こう書くしかなかったのだろうが。地震予知委員会の地震学者たちに嫌味をいうことで、すこしだけ留飲を下げているようにも見える高島の「M8」「国民への警告」という意味でも「為政者」の発奮を促すという意味でも全くの期待外れを感じた。若いポストドクターが為政者の誰にも相手にされず、起きてしまった首都直下地震に右往左往する日本中の大混乱を書いて欲しかった。首都直下地震はそれほど切羽詰まっていると感じているから。ワレワレはほんの少し前に、フクシマの時の為政者たちの右往左往や無策ぶりを経験したばかりだから、為政者のカッコよさを協調されても、なんだか空しい。


「教場」(15年 長岡弘樹 小学館文庫)

”落ち度があれば退校”という警察学校の物語。「教場」は警察学校の「クラス」のことらしい。裏表紙には”既視感ゼロの警察小説”とあり、全く知ることのなかった警察学校の物語なのに既視感ゼロとはどういうことかと、ソコにも興味があったが読んでみて得心した。優れた警察官を育てるということが理不尽さとの戦いであり、陰湿なイジメを凌いでくることで警察官が出来上がるのかと思うと、これも想像で言うのだが昔の軍隊のようだ。こうして選抜されてきた警察官だが、酒酔い運転や桃色奇行など不祥事が絶えることがないから、市井のワレラとの一体感も湧く。
既視感とは職務質問のイロハなどが、実際の経験はないものの映画やテレビドラマで見たことのある警察官そのものであり、興味深い。鬼教官が読者の共感を呼び続編も出てるらしい。面白そうだ。

2025年12月30日火曜日

ロバの耳通信「パンドラ・アイランド」「命の遺伝子」

「パンドラ・アイランド」(07年 大沢在昌 徳間文庫)

離島に保安官として雇われた元刑事が殺人事件を解決する。大沢の「新宿鮫」シリーズ(91年~)は面白く読んだが、これも一種の刑事モノ。「新宿鮫」に比べずっと会話が多く、キッチリ読み込まないとスジを外しそうになったが犯人捜しの長編ミステリーを充分楽しめた。登場人物で特段に面白かったのが元妻(警察官僚と推定)や風俗嬢との会話。元妻とのそれは、親友との親しい会話だし風俗嬢とのそれは純情恋愛物語といったところか。ふたりのステレオタイプの女性はワタシたち男の夢である。
うん、これは書いておかねばと思ったこと。この文庫本の装丁が良かった。この文庫本の装丁だけで、ハードボイルドらしさが伝わる。上巻は葉っぱ(コカの葉らしい)が、下巻は銃弾が描かれ、本作の重要なキーワードになっている。
「パンドラ・アイランド」では鉄条網ごしの海をデザインした<ハードカバー>(徳間書店)、ヤシの木と白い砂の<上下合本版>(徳間文庫)、船の丸窓から見える島の<集英社文庫>と、装丁に様々な工夫がみられるのも面白い。


「命の遺伝子」(11年 高嶋哲夫 講談社文庫)

既読の本を図書館から借りてしまうことが良くある。「命の遺伝子」がそうだった。16年ころから、面白く、あるいは思い切りつまらなく読んだ本の記録を付け始めたのは、そういうミスが増えてきたから。自分に残された時間がそうたくさん残されていなくても、何度も読みたい本もいくつもあるが、ウッカリ既読の本をまた読み返すのは業腹だ。

ナチスの残党がアマゾンの奥で生き残っていて、第3帝国の再建を窺う、なんてヨタ話はいままで多く接してきたが、「命の遺伝子」では遺伝子工学にスポットを当て、ナチ存続節に真実味を出している。最初の数10ページを読んで、既読なのに、グイグイ引き込まれる。片道2時間弱の通勤生活が長かったから、その頃に読んだ本に違いない。かなり忘れているが、登場人物の描き方とかをところどころ憶えている。
つまらない本で時間を浪費するよりと、また読み始めた600ページ強の大作。

昔、転勤先の神田でウマいラーメンを見つけた。感動の塩ラーメン。背油コッテリなのに重くなく、具は一切れのペラペラ焼き豚と青ネギ。12時を過ぎると長い列ができるので、今日は食べるぞと意気込んだ日はお昼前に、それでも列に並んで食べた。工事のためそのラーメン屋がなくなるまでの約2年間、毎週2回、多いときは3回並んだのだが、テーブルに届けられたアツアツの塩ラーメンの背油をレンゲでよけ、スープを口に運んだときの衝撃の旨さは毎回のことだったし、今も舌が記憶している。

面白い本なんてのは、出会いから感動の塩ラーメン、そういうものじゃないかな。

2025年12月15日月曜日

ロバの耳通信「月の満ち欠け」「天空への回廊」

「月の満ち欠け」(17年 佐藤正午 岩波書店)

佐藤正午を「アンダーリポート/ブルー」(15年 小学館文庫)で初めて知って面白さに目覚め、続けて読むことになったのがこの「月の満ち欠け」。リーンカーネーション<生まれ変わり>を題材にした、ミステリー。新しいカタチの恋愛小説ーと言ってもいいだろう。
登場人物は多くはないが、誰かは誰かの生まれ変わりだとか、誰かは誰かの友達だとか、私は元々人の名前と顔がなかなか覚えられないタチ(一種の病気らしい)だから、えらい苦労して読み進めた。あげく、哲彦をアキヒト、哲をアキラと読ませたりの判じ物みたいなところがあるから余計に迷い込んでしまった。とはいえ、読みやすい文章だし、スジを多少違えても小さな物語は完成度が高く、それぞれ十分に楽しめた。

一旦読み終わって、先に読み終えていたカミさんの解説をフンフンとわかったふりをして聞き、もう一度最初から読まなければキチンとこの作品の良さをちゃんとわかることができないと思うのだが、佐藤の作品は手探りが本領だから、スジを全部わかってしまうと感動が半減することを前読の「アンダーリポート/ブルー」で経験済み。さて、どうしたものか。

「天空への回廊」(04年 笹本稜平 光文社文庫)

エベレスト山頂近くに落ちたアメリカの人工衛星の回収作業に中国、ロシアまで加わり、人工衛星は実は核兵器だった。と、山岳サバイバル+スパイものでエンターテインメント要素たっぷりの小説なのだが、何せ長い。日本人登山家をヒーローにしたのはいいが、登場人物が多すぎ。それらの性格描写や動きまで丁寧に描き込んでいるから、長い。文庫版650ページの後半はそれなりに盛り上がるから楽しいのだが、この長さ、また読みたいという気になれない。
気に入った本は、時間をおいてまた読むことが多い。初回はストーリーに追われながら性急さを楽しみ、二度目は主人公の行動だけでなく環境や季節などを意識しながら、じっくり読み解く。そうして、牛が反芻するように味わうのが常で、何度も読んだ本も多いのだが、「天空への回廊」は、ただジェットコースターで飛びゆく風景のようにスピード感あるストーリー展開を楽しんで、終わり。もっと長い本やシリーズものを何度も読むこともあるから、長さへの抵抗だけではないのだろう。つきつめれば、ワタシの「好みじゃない」ということか。何度も書くけど、面白かったんだけどね。

2025年11月25日火曜日

ロバの耳通信「ウォールストリート・ダウン」「THE 4TH KIND フォース・カインド」

「ウォールストリート・ダウン」Assault on Wall Street(13年 カナダ)

金融危機の際、すべての財産と難病の妻を失った警備員の男が、アサルト・ライフルで地方検事やら自分に不良債権を掴ませた証券会社のトップやらを撃ちまくるというなんとも、八つ当たりがすぎないか感いっぱいの映画。仕事を失い、家を失い、健康保険も下りなくなった妻は自殺と、ジワジワと金に苦しめられてゆく様子は、そこまで酷い目に遭ったことはないにせよ、投資の失敗で青くなった経験のあるワタシにも理解できる。彼をダマした極悪ブローカーもいただろうが、ビルの駐車場から正面のビルの窓から見える証券マンたちをかたっぱしから撃つとか、証券会社に乗り込んで見境なく撃ちまくるとか、やっぱ、やりすぎだって。
この映画には主人公ドミニク・パーセルの友人の警備員役にワタシの好きなエドワード・ファーロングが例のヤク中毒風かついつもの哀しそうな顔で出ていた。あれだけ、薬物やアルコールなどで問題を起こしながらも役者でいられて、日本での人気が本国のソレを格段に上回っている不思議なエドワード・ファーロング。デビュー作の「ターミネーター2」(91年 米 ジョン・コナー役)以来、地味に頑張っているが、「ウォールストリート・ダウン」以降見ていないから、また問題をおこしているかも。

「THE 4TH KIND フォース・カインド」(09年 米)

題の意味は例のUFOとかの「第四種接近遭遇」のことらしい。宇宙人にさらわれたとかソノくちのドキュメンタリー風に仕上げられてはいるが、wikiによると嘘っぱちドキュメンタリーらしい。夫を殺され(実は自殺)、娘を宇宙人にさらわれた(と言っている)女性心理学者の役をミラ・ジョボビッチが演じているが、「バイオハザード」(シリーズ 米映画)のアリスの颯爽さとは違い、娘がいなくなりキチガイのように泣き叫ぶ普通の母親の役。

UFOとかを信じてやまないカミさんいわくは、こういう映画は、真実を隠蔽するために作られているから、裏のウラまで読まなければならないらしい。映画としてはいい出来でなかなか面白かった。先日、「パラノーマル・アクティビティー」(07年 米)”超常現象”を「また」見たが、バカバカしくて「やっぱり」途中で放棄。まあ「THE 4TH KIND フォース・カインド」のほうがアレよりは良かったかな。

2025年11月2日日曜日

ロバの耳通信「七十歳死亡法案、可決」「君たちに明日はない」

「七十歳死亡法案、可決」(15年 垣谷美雨 幻冬舎)

破綻寸前の日本政府が窮余の策として強行採決した”七十歳死亡法案”が2年後に施行され
ることになった。新法は寿命の足切り、70歳になると安楽死させられるというとんでもない法律だが日本救済のアイデアとしては説得力があった。どうせ長生きできないのなら今のうちにという享楽主義の蔓延など、死を前提にした人々の心境の変化が興味深い。

この小説の主人公は、ワガママな義母の介護に疲れ果てている主婦。新法のおかげであと2年で、このワガママの世話をしなくていいのだと喜んだものの、あと2年がガマンできない。引きこもりの息子、寄り付かない娘、何より能天気の夫とその兄妹たち。全員、敵。登場人物のすべてがステレオタイプに描かれてはいるものの、イマの日本の家庭の縮図。著者の垣谷はそれを最後まで描き切れず、ハッピーエンドにしてしまったのがかえすがえすも残念。長生きなんかしたくないと多くの年寄りが思っている「本音」を垣谷はホントは理解していないんじゃないか、そんな気がした。




「君たちに明日はない」(07年 垣根涼介 新潮文庫)

リストラ請負人を描いた痛快無比のエンターテインメント小説。あとがきで、垣根自身が”小説は、魅力的な人間像を描くことが重要”と述べているが、登場人物の全員がイキイキと描かれ、文句ない面白さだ。続編(「借金取りの王子」)もあり、テレビドラマ化されているというが、本作を超えているだろうか。テレビドラマの方は、配役を見たら、動画サイトで探す気にもならなかった。小説のイメージとゼンゼンちがう・・。案の定、話題にもならなかったらしい。

垣根には会社員の経験があるという。(首を)切られる側か切る側かの立場に立ったことがあるのかもしれない。管理職としての会社の見方や、企業再生屋の説明なども的を得ている。若い会社員にも読んでほしい気がする。

2025年10月28日火曜日

ロバの耳通信「アポストル 復讐の掟」「アシュラ」「6時間」

「アポストル 復讐の掟」(18年 米)

Netflixオリジナル。カルト宗教の島に誘拐された妹の救出に行った男の物語。時代や場所は曖昧だが、旧式だが銃もあるから近世か、米五大湖にあるアポストル諸島かと想像、寒そうだし。このカルト宗教がなんともすごい。ただのババアを女神にして悪いことは皆この女神のせい、リーダーたちの娘や息子がデキてしまい、見せしめに片方を殺したことからリーダーたちが反目。ババアが実は魔女で、妹を救出に行った男がババアの魔力を引き継ぐとかハチャメチャ。ストーリー展開は場当たりに思えるほどの雑さだし、エロなしグロだらけのスプラッタ劇に納得できるワケもない。うーん、脚本どうなってるのだろうと思うが、まあいいか。

配役は知らない役者ばかりだけど頑張っていて、撮影もキチンとしているから安っぽさはない。まあ、こういう映画もアリかな。切られたり抉られたり、あげくアタマにドリルで穴を当てられて悪魔を追い出す儀式とか、キモイけどドキドキしながらみられたし、妹の救出に来た男の視点を変えず、島の中あちこち冒険を楽しめたからまるでRPGゲームのようだった。

「アシュラ」(16年 韓)

R15+のノアール映画。架空の都市・アンナム市の市長、市長の子飼の刑事、検事ほか全員ワルモノ。その中で極ワルの市長ソンベ役のベテランのファン・ジョンミンがいい。優しい笑顔はすぐにブチ切れる、ステレオタイプの韓国の権力者のイメージ。

暗くて行き場のない怒り。韓国ノワール映画では、権力者はいつも極ワルに描かれる。テーブル一杯に並べられた酒肴、刑事たちの出前の食事、拳銃、鎌、金づち、ヤッパなど韓国映画の定番メニュー。メッチャ面白かった。見終わって気付いた、イカン、中毒になっている。韓国ノワール、蜜の味。

「6時間」(15年 チリ)原題 6Hours:The End

原子炉爆発までの残された時間は6時間。ラストの大爆発までは、アパートの一室内での若い男女のダラダラセリフのやりとりだけ。最後のエッチのあと女はどこかに出て行き、残された男は訪ねてきた友人とマリファナトリップ。隣の若い女が合流したところで、友人はその女に無理強い。男は友人に怒りをぶつけ、”最後に正義を行う”と意味不明なことを隣の女に告げ、その女を連れてどこかのビルの屋上に<意味不明だって、そんなの>。最後にドカーンでオシマイ。残り何時間と切られた人間が何をするかという命題にエッチだけだとぉ?66分作品だが、それでもダラダラ感いっぱい。観客を舐めてるどうしようもない映画。