2024年6月20日木曜日

ロバの耳通信「SPOOKSスプークスMI-5」「スノーホワイト-氷の王国ー」

「SPOOKSスプークスMI-5」(15年 英)原題:MI-5

時間を忘れるほど夢中で見た。イギリスのスパイものが面白いのは伝統か。MI-5英国情報部内にテロリストの内通者がいることを知った情報部員が元部下と共に内通者を突き止めるというスジ。ラストのどんでん返しで、内通者がCIAと結託することでMI-5長官の席を狙う上級職員だったことが明かされるが、それまでは誰がワルモノかわからず、派手さのないアクションとジワジワと真実に迫る英国流の謎解きを楽しめた。

主人公の血の気の多い元諜報部員役にキット・ハリント(「ゲーム・オブ・スローンズ」(米テレビドラマ))、老練情報部員役のピーター・ファースが秀逸のスパイらしさ。さらにアメリカ生まれの英女優ジェニファー・イーリーがいつもの”冷たい表情の上級奥様風”で幹部役で出演していて、楽しめた。普段の英国ではキレイな女性なんかついぞみることはないのにこの映画の配役は皆、揃って美人。皆、女優だから当たり前といえばそうなのだが、現実との乖離が大きいとかなりの違和感。

英国で大ヒットのBBC製テレビシリーズ「MI-5 英国機密諜報部」をもとに作られた映画だというから、オリジナルの動画サイトへのアップロードを待つことにしよう。

「スノーホワイト-氷の王国ー」(12年 米)原題: Snow White & the Huntsman

原作はグリム童話の「白雪姫」「本当は怖いグリム童話」みたいな本かマンガを読んだ「トワイライト」シリーズのベラ役(08年~))ってゼッタイオカシイ。
記憶があるが、この作品も十分残酷で怖い。主人公の白雪姫役にクリステン・スチュワート(
ダークファンタジーだし最後は継母の心臓に短剣を刺す役だから純潔無垢ばかりの美しいお姫さまというわけにはいかないだろうけど、ゼンゼンキレイじゃない。ディズニー映画の白雪姫のつもりで見ていた方も問題なんだろうけど、同じ年に公開された「白雪姫と鏡の女王」(米)の白雪姫役の英女優リリー・コリンズの輝くほどの美しさとはえらい違いだ。
継母役のシャーリーズ・セロン、この俳優、あまり好きじゃないのだけども、この映画では実にイキイキしていて気に入った。こういう本当は魔女で邪悪な継母役がピッタリ。この役でティーン・チョイス・アワード映画部門「ヒステリー賞」なんて賞を獲った(wiki)とあったけど、わかる気がする。

2024年6月10日月曜日

ロバの耳通信「デス・ウィッシュ」「孤独なふりした世界で」

「デス・ウィッシュ」(18年 米)原題:Death Wish

チャールズ・ブロンソン主演の「狼よさらば」(Death Wish 74年 米)のリメイクで主演がブルース・ウイルス。前作では、小心のブロンソンが妻子が凶悪犯罪に巻き込まれてから、復讐心から銃を手にしタフガイに変化してゆく様に共感と喝采を送ったが、本作のブルース・ウイルスは外科医の設定ながら、最初から強面。犯罪で妻を失い、娘が瀕死となった父親が犯罪者を憎み狼に変わって行くーという一番いいところがまるで伝わってこない。
不死身(「ダイ・ハード」)のブルース・ウイルスを主演に持ってきたのはミスキャストだと思うし、ブルース・ウイルスはもはやパクリみたいなリメーク作品に出るほど窮してるのかと幻滅。犯罪が減っていないアメリカ大都市の社会問題提起なのか、自警団推奨が主題なのか、ただのアクション映画なのか。どっちにしても薦められない映画。

「孤独なふりした世界で」(19年 米)原題:I Think We’re Alone Now

疫病か何かで町の人が死に絶え、唯一人生き残り、死者を埋葬するだけの生活を送っていた小人症の男(ピーター・ディンクレイジー「ゲーム・オブ・スローンズ」(09年~ 米HBO)ほか)。薄暗い図書館で暮らす彼のもとに現れたひとりの少女。孤独を慰め合いながら一緒に暮らすうちに、少女の両親と言う男女が現れ連れ帰ってしまう。
ほぼ照明がなくなった町、ふたりになってからもセリフは殆どないから、押し包むような孤独感は半端ない。

大好き終末世界サバイバル映画。無人のスーパーで値段も見ないでカートにポンポンと食糧などを放り込むなんて、結構あこがれていいて、まあ、多少のお金ならあるし、近所のスーパーで一度やってみたいとも思うのだが、タダでもらうのとお金を払うのは気分がちがうだろうな、と。

2024年5月30日木曜日

ロバの耳通信「ミッション・ワイルド」「マイ・ブラザー 哀しみの銃弾」

「ミッション・ワイルド」(14年 米仏合作)原題:The Homesman)

トミー・リー・ジョーンズの主演・脚本・監督でリュック・ベッソン製作、面白くないワケがないのだが、なぜか日本では劇場未公開らしい。

Homesmanとは、開拓地で暮らせなくなった移住者を出身地に連れ帰る仕事を請け負う人。こういう救済システムみたいなものは実際あったらしい。教会が中心になってたようだ。
時代は南北戦争直後の西部。この映画では、開拓地の暮らしの中で精神を病んだ3人の女を馬車で約400マイル離れた教会に届けるというこの割の合わない仕事を引き受けた未婚の女(この時代ではオールドミスーヒラリー・スワンク)と、この女に雇われた流れ者(トミー・リー・ジョーンズ)が主人公。4人の女とひとりの男が哀しい。誰にも愛されないこの未婚の女の孤独は若い頃からモテることのなかった私には多少わかる。だが、3人の女の不幸はさらに酷い。ちょっと具体的にはココに書けないほど酷い目に遭って狂ってしまっている。演技とはいえ、女の狂ったのは怖い。

面白い役だったのがメリル・ストリーブ演じた、受け入れ先の牧師の妻。ひとことで言えばノー天気。この孤独と不幸続きの2時間の映画の終わりでつくり笑顔を見せられてもね、ゾッとしてメリル・ストリーブがより嫌いになった。

「マイ・ブラザー 哀しみの銃弾」(13年 米仏合作)原題:Blood Ties

主演が英男優のクライヴ・オーウェンでなんだかヨーロッパの匂いがすると思って見終わってからチェックしたら、米仏合作、しかもフランスの名優ギヨーム・カネ主演の「Les Liens du sang」(13年 仏)のリメイクだと。どうりでやたらお涙頂戴の情話風だし、配役、特に米仏混成女優たちのチグハグさが鼻につくなと。

物語は7年の服役後出所した男が、身内や前妻にも歓迎されず、再び悪の世界に身を落としてしまう、と、まあよくあるハナシ。
クライム映画はキライじゃないが、どうもこうウジウジしたフランス浪花節はどうもね。2時間半も待たされての終わり方もスカッとしていないし。

2024年5月15日水曜日

ロバの耳通信「INFINI/インフィニ」「アンロック/陰謀のコード」

「INFINI/インフィニ」(15年 オーストラリア)原題:Infini

原題は惑星の名前。そこにはエネルギー源となる鉱石があり割りのいい採掘の仕事があるが、行くにはスリップストリームという位相空間移動じゃないといけない。空間移動は人によっては狂ったり死んだりすることも。

鉱石が人間を狂わせる生物に汚染されていることが分かり、鉱石を自動転送するシステムを停止し、現地の技術者を連れ戻すための部隊をイニフィニに派遣することに。空間移動とか、鉱石そのものが生命体で、派遣されてきた人々の細胞を吸収することで成長するとか、SF映画らしい突拍子もないスジだったし、途中ダラけたが、まあ面白かった。


同類の「エイリアン」シリーズ(79年~ 米)みたいに、最後に続編を示唆するラストがあるかと期待したのだが、なーんにもなし。残念。


「アンロック/陰謀のコード」(17年 英・米合作)原題: Unlock

CIAとMI6、イスラムテロ集団、三つ巴のスパイアクション映画。スジはどうでもいいがキャスティングがすごい。映画は「完落ち」の意味。監督はマイケル・アプテッド、出演のノオミ・ラパスは好きな女優じゃないから(個人的に置いておいて)マイケル・ダグラスとかジョン・マルコビッチとか重鎮をいい役に配置。オーランド・ブルームなんぞは役もはっきりしないチョイ役扱い。これだけ役者を揃えると、製作陣も脚本も製作費も半端じゃいけないのだろう、おかげでスピード感のある面白い映画になった。

きわめて個人的な感想を書くが、ノオミ・ラパスのキシャな体と表情のなさは、スパイアクションの主役じゃない。

2024年5月5日日曜日

ロバの耳通信「テイキング・オブ・デボラ・ローガン」「ファースト・キル」

 「テイキング・オブ・デボラ・ローガン」(14年 米)原題:The Taking of Deborah Logan

アルツハイマーだとみられた老女が実は悪魔憑きだったというとんでもないハナシ。

事前チェックなしで見始めたオープニングではアルツハイマー病の記録フィルムを使っているとのテロップが流れ、「X-Men」シリーズ(00年~ 米)、「ボヘミアン・ラプソディ」(18年 米)など多くの有名映画の監督ブライアン・シンガーの作品だったし、テレビシリーズ「Dr.HOUSE」(04年~ 米)で、疾病を解説してくれていたので、アルツハイマー患者を扱った、結構ハードルも高いドキュメンタリー作品だと思っていた。事実、映画のスタート部分は、アルツハイマー症状で老女が奇行を繰り返し、明日は我が身の認識もあったのでそのつもりで見ていたのに、実はとんでもないオカルト・ホラー映画だった。

アルツハイマー病を悪魔憑きと結びつけるなんて、どうかと思うよ。この映画、ワタシが大嫌いなヘビがたくさん。それだけでも腰が引けてしまっているのに。とにかく、誰にでも訪れる老いと悪魔憑きを一緒にする感覚は許せん。


「ファースト・キル」(17年 米)原題:First Kill

学校でイジメに遭いメゲてしまった幼い息子と、故郷の田舎町で一緒に狩りをすることで親子の絆を修復しようとする若い父親のヤング・エグゼクティブ(ヘイデン・クリステンセン)の物語。ヘイデン・クリステンセンは「スターウォーズ」シリーズ(02年~ 米)でアナキン・スカイウォーカーを演じ、散々こきおろされた軟弱男。極悪な町の保安官を演じた町の保安官役のブルース・ウィリスとは存在感が違う。ストーリーは、混み入っていて説明ももどかしいが、結局軟弱男が敵をやっつけ、息子との絆を取り戻すというハッピーエンドなんだけけれど、いまいち共感できないのはなぜだろう。ライフルを撃たせたり、父親の強い姿を見せられても、帰ればイジメは続くだろうし、父親は相変わらず家庭を顧みないだろうし。父と息子へのこだわりをアピールしたかった割りには父親の強さが見えてこないし、これだけ母親の存在感のないアメリカ映画もは珍しい。

本国アメリカで公開されていないのは何故だろうか。やっぱり、面白くなかったんだろうな。

2024年4月20日土曜日

ロバの耳通信 「ファインド・アウト」「パーフェクト・ルーム」

 「ファインド・アウト」(12年 米)原題: Gone


ジツのところ、アマンダ・セイフライド(「レ・ミゼラブル」(12年 米)コゼット役)が好きじゃない。嫌いなのはあの目かな。だから、誘拐モノ、犯人捜しの本当は面白い筈のストーリーも、アマンダの顔見てるだけでイライラが募るだけ。じゃあ、見なければいいのにという考え方もあるが、見始めたら最後まで見なきゃならない貧乏性。主人公のアマンダを全く信用せず、妹の失踪を妄想だと片付けてしまう刑事の気持ちのほうにより、共感。

当時、アメリカで社会問題とされていた、女性の誘拐事件の多さがこの映画のテーマらしい。ラスト近くで、犯人は主人公に殺されてしまうが、スッキリしない終わり方に余計、イライラ。


「パーフェクト・ルーム」(14年 米・ベルギー)原題:The Loft


ヒット作のベルギー映画「ロフト」(18年)のハリウッドリメイク作品。5人の男たちが、妻たちに隠れて愛人と逢うために共同で借りたマンションの一室に残された美女の全裸死体。

犯人捜しのミステリーは充分楽しめたが、ワタシには人の顔や名前をなかなか覚えられないという致命的な欠陥があり、しかもその名前が、ビンセント、クリス、ルーク・・といった横文字だし、この男のカミさんがアレで、愛人がアレで、とかゼンゼン頭にはいっていないから、登場人物の多いミステリー洋画はいつも苦労する。

これが文庫本だと、主な登場人物を紹介したリストがあるし、韓国ドラマとかはあらかじめ顔写真つきの人物相関図を準備して見始めるのが常。

よくそれで長くビジネスマンやってたねといわれそうだが、自分なりの工夫をしていたんだよ。自分にとって重要な人との初対面の際は、手帳に日時、氏名のほかに、推定年齢、簡単な似顔絵、似てる有名人など、その人を特徴付け、記憶するためのメモを書き込みしていたね。ハナシの途中で聞きだしたその人の趣味なども。

見終わった「パーフェクト・ルーム」も、結局犯人が誰だったかも良く憶えていない。そんな記憶力だから、映画や本は何度でも楽しめるし、レンタルビデオ・DVDの時代は同じものを2度も3度も借りてきて、家族に良く笑われた。

2024年4月10日水曜日

ロバの耳通信「ジュピターズ・ムーン」「Mr.& Miss.ポリス」

 「ジュピターズ・ムーン」(17年 ハンガリー・ドイツ)原題:Jupiter holdja

ハンガリー国境で撃たれたシリア難民の少年が空中を浮遊する能力を手に入れ、それを利用し金儲けを企む医師。医師は医療ミスで多額の賠償金を求められていたというスジ。突然の体の変化で戸惑う少年と欲丸出しの医師の旅。暗いイメージのハンガリーの病院と病気を早く見てもらいたいと押し寄せる難民たち。

何を示唆していたのだろうか。少年の戸惑いも医者の失意と欲望もなんとなくわかる。少なくとも楽しい場面や和むところもないから、娯楽作品でないことはわかる。映画の終わり方も放り出すような感じ。戸惑いと暗い気持ちだけが残った。ポスターは目を引くが、勧められる映画ではない。


「Mr.& Miss.ポリス」(14年 米・ロシア)原題:Black Rose

舞台はロサンジェルス。連続して発生しているロシア女性の殺人事件の捜査が進まないことに業を煮やした警察幹部はロシアから捜査員を呼ぶ。ロシアから来た特殊部隊出身の捜査員が、プロファイラーのネェちゃんと組んで大活躍。ひどい邦題はココからきているのか。原題の Black Rose は殺されたロシア女性が咥えさせられていたバラ。

映画は粗っぽいツクリで、見るに堪えないどうしようもない作品だが、渡米したロシアの捜査員を出迎えたロサンジェルス市警の刑事が街を案内、大都市の光と影を説明し、浮浪者とゴミだらけの街を見せるシーンが良かった。B級映画でもなにかの思いを込めたところ、矜持みたいなものを確かに感じ取ったよ。

シュワちゃんがロシアンマフィアを退治にシカゴに乗り込む「レッドブル」(88年 米)で、安宿のテレビ番組をチラ見して”キャピタリズム(帝国主義)”と吐き捨てるように言ったセリフを耳にしたときと同じ気持ち。