2017年7月17日月曜日

ロバの耳通信「ルーシー」「新感染 ファイナル・エクスプレス」

「ルーシー」(14年 仏)

予告編を見てから、ずっと見たいと思っていたリュック・ベンソン製作・監督の映画。合成麻薬のせいでスーパーウーマンになったルーシー(スカーレット・ヨハンソン)が大暴れし、最後はコンピュータになってしまうという他愛もない作品なのだが、最近見た映画では「最高に」楽しめた。たまには、こういうハチャメチャもいい。パリのマフィアが韓国人というのが笑えた。

韓国つながりで、もうひとつ。

「新感染 ファイナル・エクスプレス」(16年 韓)。原題は「釜山行き」。ゾンビに支配されたソウルから急行列車で釜山に向かう父娘が無数のゾンビと戦うというこれもとんでもない筋書き。無数のゾンビは「ワールド・ウォーZ」(13年 米)並みで、ハリウッドではCGだったらしいが、韓国映画のゾンビは実写。凶暴で怖い。これも、なぜとかどうしてとか、考えずに没頭できた。映画のだいご味はエンターテインメントだとも思う。イケメン男優のコン・ユの娘役になったほとんど無名の子役がウマかった。こちらは、韓国でも未曾有のヒットで、もうすぐ日本公開らしい。

2017年7月16日日曜日

ロバの耳通信「エイリアン:コヴェナント」「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」

「エイリアン: コヴェナント」(17年 米)


リドリー・スコット監督は決してファンを裏切らない。「エイリアン」(79年 米)シリーズの最新作であり、「プロメテウス」(12年 米)の続編。とはいえ、このシリーズは、どれから、何度見ても楽しめる。怖さは手を変え品を変え、ぞんなバカなと思われるストーリーも、舞台を宇宙にしてリドリーが語ると、未知の宇宙ならこういうこともあるだろうと思わせられる。緊張と弛緩の繰り返しで深みに誘い込む技法は日本の怪談話にも似て、気が付けば観客は舞台の上で踊らされている。エンドはさらなる恐怖を観客に植え付けたまま暗黒に放り出す。

いつも泣き顔のキャサリン・ウォーターストンが良かった。「エイリアン」シリーズのシガニー・ウィーバーになるような、そんな気がしている。

「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」(17年 米)

外れたことのないトム・クルーズの主演、さらにこれも大ファンのラッセル・クローが加われば無敵・・と思うのが常じゃあないか。ユニバーサルのロゴが画面いっぱいに出るだけえドキドキするほどの期待感。どこからか面白くなるんじゃないかと待っていたのだが、エンドロールが出て、アレ、アレこれで終わりかよと腹が立った。生き返ったミイラと戦うという、そもそもが現実離れしたストーリーなのだから固いことは言いっこなしなのだろうが、太目のトム・クルーズがヨタヨタ。SFXと効果音楽があるのだから、何とかならなかったものか。今まで見た、数多くのミイラ映画で一番ひどい。長く待っていた映画だったのに。

2017年7月10日月曜日

ロバの耳通信「ライフ」

「ライフ」(17年 米)

週末の昼食後、眠くてたまらないのでなんとか目が覚める映画をと漁っていたら、動画サイトの口コミ1位になっていた。チェックすると、密室(宇宙船)で地球外生命体と戦うSFとある。「エイリアン」シリーズ(79年~ 米)をはじめ、映画もゲームもこの手のものが好きなので早速。

眠さは吹っ飛び、ずっと手に汗握る状態。この手の映画ではクルーたちが宇宙生物に次々と襲われ、ひとり残されたヒーローかヒロインが地球外生命体をやっつけて無事地球への帰還に・・で、メデタシメデタシとなるのだが。これは、違った。こういう終わり方をすれば、「ライフ2」なんてのもすぐ出てきそう。主演のジェイク・ギレンホール(ポスター中央)は、「ブロークバック・マウンテン」(05年 米)のカウボーイ役が特に良かった。LGBTが現代ほど寛容でない頃のものだが、彼の代表作として勧めたい。

2017年7月6日木曜日

ロバの耳通信「羊と鋼の森」

「羊と鋼の森」(15年 宮下奈都 文藝春秋社)

すでにどこかに書いたか、話したような気がするが面白い本は一行目からそう感じる。装画も装丁もなかなかいい。
ピアノの調律師が先輩や顧客との出会いのなかで成長してゆくという、まあ青春物語なのだが、すこしも青臭くないのがいい。作者がなりたての調律師の言葉を借りてピアノやピアノの音を語るが、迷いながらも、最もふさわしいと思われる言葉を、自分の語彙の貯金から探して、やさしい(易しいと優しい)文章にしているのがいい。よく知らない言葉で無理して背伸びしたために読者を路頭に迷わせたりはしていないのがいい。だから、この作品の半分は主人公とその先輩調律師たちの気持ちの説明。だから、読者は物語と時間を作者と素直な気持ちで共有できる。

この本を手に取ったのは偶然。本屋大賞をとった話題の本だからとカミさんが図書館に予約してくれたおかげだし、どちらかというと一冊の本に時間をかけるカミさんが一気読みをしていたからきっと面白い本じゃないかと期待していた。ワタシの読む本はかなり偏りがあり、さらに臆病だから、初めての作家をチャレンジすることは珍しいのだが、一冊目でこの著者にマイってしまった。著者検索すると結構イロイロ書いてるじゃあないか、ああ、この作者の本をもっと読みたい。また読みたい本のリストが長くなってしまった。

ロバの耳通信「ハクソー・リッジ」

「ハクソー・リッジ」(17年 米)

メル・ギブソン監督作品ということで期待。メル・ギブソンの意図は反戦だったと思うが、国威高揚のヒーローものになってしまった。何に、いや誰に気を使ってこんな作品にしてしまったのだろうか。銃を持たない衛生兵ドスを演じたアンドリュー・ガーフィールドは、「ソシアル・ネットワーク」(10年 米)、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ(12年~ 米)、「沈黙-サイレンス-」(16年 米)で、おなじみなのだが、いつものへらへらヤンキーの表情、こういう顔だからやむをえないが、どうもシックリしない。主役はミスキャストだと思うが、ドスの父親役をやった、ヒューゴ・ウィーヴィング(「マトリックス」シリーズ(99年~ 米)のエージェント・スミス、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(01年~ 米)ではエルロンドを演じた)がメッチャ良かった。メル・ギブソンはドスより、ドスの父親に反戦の祈りを込めたのだろうか。

日本兵が、次々に吹き飛ばされ、火炎放射器で焼かれるシーンはなんとも後味が悪いし、日本の将官の切腹シーンはただのグロ。沖縄戦が舞台なのだが、沖縄の方々はどう見るのだろうか。