「羊と鋼の森」(15年 宮下奈都 文藝春秋社)
すでにどこかに書いたか、話したような気がするが面白い本は一行目からそう感じる。装画も装丁もなかなかいい。
ピアノの調律師が先輩や顧客との出会いのなかで成長してゆくという、まあ青春物語なのだが、すこしも青臭くないのがいい。作者がなりたての調律師の言葉を借りてピアノやピアノの音を語るが、迷いながらも、最もふさわしいと思われる言葉を、自分の語彙の貯金から探して、やさしい(易しいと優しい)文章にしているのがいい。よく知らない言葉で無理して背伸びしたために読者を路頭に迷わせたりはしていないのがいい。だから、この作品の半分は主人公とその先輩調律師たちの気持ちの説明。だから、読者は物語と時間を作者と素直な気持ちで共有できる。
この本を手に取ったのは偶然。本屋大賞をとった話題の本だからとカミさんが図書館に予約してくれたおかげだし、どちらかというと一冊の本に時間をかけるカミさんが一気読みをしていたからきっと面白い本じゃないかと期待していた。ワタシの読む本はかなり偏りがあり、さらに臆病だから、初めての作家をチャレンジすることは珍しいのだが、一冊目でこの著者にマイってしまった。著者検索すると結構イロイロ書いてるじゃあないか、ああ、この作者の本をもっと読みたい。また読みたい本のリストが長くなってしまった。
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