「田村はまだか」(10年 朝倉かすみ 光文社文庫)
初めての作家。吉川英治文学新人賞受賞、読書メーターの票も良くて期待が多かったのだけれども、うーん。小学校のクラス会の流れで深夜のバーに残った5人の男女が、クラス会に間に合わなかった田村を待つという物語。5人のこれまでの暮らしを反芻し、連作にまとめている。田村がいつ来ると結末まで気を持たせながらの、物語の組み立て方はいい。が、たった5人の話ながらキャラの描き方が足りないからゴチャゴチャになってしまった。いや、読書メータもハイスコアだから、私の読み込み不足なのだろう。途中で、歴史モノの巻頭解説によくある人物相関図を書けばよかったと反省。たかだか5人、加えて関係してくる人物たちを足しても両手の指で足りるはずの名前とあだ名が覚えられないなんて。ただ、人物相関図がキチンと書けて5人について混乱なく認識しても、面白いと感じたかどうかはよくわからない。
オマケに解説では”傑作短編”とあった「おまえ、井上鏡子だろう」もゼンゼンつまらなかった。連作とオマケの短編、それぞれよくできたスジで違和感もなかったのだが、私が本を読む目的は「共感」。なぜそれを得られなかったかは、読み終わって時間がたった今でもわからない。
「ジャパン・プレミアム」(11年 江波戸哲夫 講談社文庫)
メガバンクの管理職がリーマンショックの際に評価損を心配する顧客と丁々発止のやりとりをする様や上司との責任のなすり合いを描いている。気にいらないのがハッピーエンドで終わっていること。カタストロフィーのあとのハッピーエンドでは学ぶものがないから。
同じ銀行モノだととんでもない悪い奴らが出てきてハラハラさせる池井戸潤「半沢直樹」シリーズ(「オレたちバブル入行組」(07年 文春文庫)~)が面白かったが、この「ジャパン・プライド」にはそんな奴は出てこない。せいぜいいバブルがはじけて簿価が減ってしまった小金持ちが、契約者の父親をアルツハイマーに仕立てて、父親と銀行の間の約定を無効にしようとしたくらい。へー、銀行のエライ人の仕事ってこんなに大変なのかと思ったが、よくよく考えてみると責任の大きさは違うのだろうがメーカーの下っ端で終わった私もやっぱりプレッシャーでつぶされそうだったなと。
初めての江波戸哲夫。まあ、ちょっとだけども、面白かったから別の本も読んで見ようかと。
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