「ブラインドマン」(13年、仏)リュック・ベッソンの製作・共同脚本、監督がグザヴィエ・パリュだが、全編リュック・ベンソンらしいノワールの味付けが効いた味わい深い作品。「その調律は暗殺の調べ」という副題がついているが、退役軍人の盲目の殺し屋とそれを追うヤモメの刑事の関係は、フランスのノワール映画独特の男の繋がりのヨコ糸に、刑事を慕う部下の女刑事がタテ糸を絡め夜や雨のシーンの多い、暗いだけにおわりがちな作品に情感を醸しだしている。女刑事の役のラファエル・アゴゲがなんともイイ女で、この映画には刑事の上司の女署長、殺し屋が通う売春婦と3人しか女が出てこないのだが、それぞれにみんな魅力的なのがフランス映画らしい。
ラファエル・アゴゲといえば、こちらも脇役ながら好演していた「黄色い星の子供たち」(11年、仏)も、忘れがたい作品。第2次大戦中、フランス政府によるユダヤ人一斉検挙を題材にした作品で、「ブラインドマン」と同じく、小劇場の封切りがとっくに終了したためネット動画かDVDで見るしかないが、機会があればぜひ見てほしいと思う。
「13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi」(16年、米、日本未公開)12年にリビア・ベンガジのアメリカ領事館が襲撃された事件が題材。CIAの傭兵<軍事組織GRS(Global Response Staff)>が主人公にはなっているが、味方も敵もリビア人のドンパチだらけ、何をどう理解すればよいのかという動揺のなかでドンパチ映画を’楽しんで見ている’自分がいた。この映画の説明がちょっと難しいので、新聞の論評を勝手に引用。実のところ、この論評もわかりにくいのだが。
本作「13 Hours」は、リビア人達に加えアメリカ政府を悪者として描いている。そして、マイケル・ベイは、その感度の鈍い映画スタイルにとっては、一貫性など前提にされないという事を、証明し続ける事で自身のキャリアを構築してきた人物でもあり、その部分こそが、影の力からの脅威に、一つの姿勢を表せる要素なのだと言えるだろう。その意味でいって、彼がここでおそらく批判している、ほとんど顔もみせない政府の人間達を、彼自身が反射している訳でもあり、その姿はまさにアメリカ人そのものと言えるのだ。(The New York Times)
「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」(Locke 13年英)不倫し妊娠させてしまった同僚の出産に立ち会うためにハイウェイを急ぐ主人公ロックが車中から、やりかけの仕事の部下や上司、病院の医師、不倫を告げられた妻、息子など多くの人々と携帯で話をするというそれだけのハナシなのだが、限られた時間の中で携帯で話をすることしかできない状況はデジャブがありなんだか身につまされた。
86分の映画のすべてがハイウェイを走る車、車中、流れる風景だけの映像。キャストはロックだけ。あとは携帯の音声のみというラジオドラマのようだが緊張感のある作品。動画サイトでも見れるので、雨の夜、一人で見る映画としてぜひ勧めたい。
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