2017年1月23日月曜日

ロバの耳通信「水のかたち」

「水のかたち」(宮本輝 12年集英社)

上下巻の上の100ページほどまで読んで、退屈さに中断していたから、他の本と一緒に図書館に返却するつもりでいたが、カミさんが自分も読む予定だからと。それならと、枕元に積んで少しづつ読み進めていて、下巻に入ったら俄然面白くなってあとは一気呵成に読んでしまった。ふう、途中で返却せず良かった。

普通、といっても働き者の夫とグレていないふたりの子を持つ、まあ、めぐまれた主婦志乃子が骨董を手に入れてからの謎解きミステリーのような物語。

「水のかたち」という題名がピッタリの志乃子とその周囲の人々の縁(えにし)の物語は、出来すぎ感はあるもののイヤ味がなくズンズン進む。

濃密な人間関係が嫌で仙人のような、否、オタク生活をしている私にはうらやましいより、むしろ「よくやるなー」とあきれるほどの志乃子の豊かな人間関係とフットワークだ。うんうん、経済的な心配はもとより、病気や家族やその他もろもろの心配事がなく、骨董などとひとり相撲を取っていられる有閑夫人の駄話ではないかと、正直僻んでみたりもする。

骨董だけでなくジャズや洋酒、糖尿病、コーヒーについての蘊蓄はウザイけれども楽しい。

昨年末以降、まだ何冊目かにしかならない宮本輝の作品ではあるがいろいろなシーンを見せてくれている。当分飽きそうにない・・な。

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