2017年10月29日日曜日

ロバの耳通信「IT/イット”それ”が見えたら、終わり」

「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」(17年 米)

原作「IT」(94年 スティーブン・キング 文春文庫)第4巻まである長編を読んだ記憶はあったが、ずいぶん前なので筋もおぼろげ。同名の映画は90年(米)に封切りされていて、気味の悪いピエロのポスターだけが記憶に残っていて、映画そのものは見た憶えもなかった。

「IT/イット・・」は、原作の一部の少年たちの冒険をホラーで味付け。同じく青春物語のキング原作の映画「スタンド・バイ・ミー」(86年 米)は原題「THE BODY/死体」というほど怖くはなかったが、「IT/イット・・」は、次から次へと化け物が効果音楽付きで出てきてやたら驚かされた。古井戸やクネクネ出てくるオバケとかは日本のホラー映画でハリウッドでもリメイクされた「リング」(98年 邦画)の影響を強く受けたらしい。B級のせいなのだろうか、配役は全員マイナー。ほかの作品で見たことのない若い俳優たちが、それでもいい演技をしていて楽しめた。



主役のひとりビル少年役のジェイデン・リーベラーがとても表情豊かだったり、ショートカットの少女ベバリー役のソフィア・リリスがとても可愛かったりで、将来が楽しみ。

うん、そうだ。タイトルバックが始まる直前の暗転にITの文字に重なってCHAPTER ONEという文字が出たから、続編にも期待できそう。

2017年10月27日金曜日

ロバの耳通信「ツイステッド」

「ツイステッド」(04年 米独)

監督がフィリップ・カウフマン、主役がアシュレイ・ジャッド、ワキにサミュエル・L・ジャクソンとアンディ・ガルシアで、配給がパラマウントとくれば面白くないワケがない・・と思っていたのが、大外れ。なんだよ、そんなのアリかよというストーリー展開。うん、確かにミステリー映画なのにワタシに最後まで犯人がわからないなんてオカシイけど、悔しくないよ、あまりにバカバカしくて。

ココは好きな作品を書くところなんだけど、間違ってもう一度見て時間のムダをしないようにまあ備忘録がわりに。

アシュレイ・ジャッドが男にも酒にもだらしない女刑事やったのだけれども、「意外な側面」みたいなところを見せることもなく、女優としてはどーなのかな。マスクだって悪くないし、メだけならイングリッド・バーグマンを彷彿させるマナザシだし、ショートカットは似合ってるし、役の上だけなんだろうけれどもサッパリした性格みたいだし、コジン的には好きなんだけどね。今年はじまった焼き直しの「ツインピークス」に出てるとのことだけど、役ナシみたい。「ダイバージェント」2作(14年、15年 米)でも存在感がなかったけど、名前だけが有名になった女優は使いにくいだろうね。

2017年10月15日日曜日

ロバの耳通信「ホタル」「いつか読書する日」

「ホタル」(01年 邦画)

テレビ日和の雨の午後。
 ずっと前に撮っておいたテレビ放送。1テラのHDDを買ったときは、これだけあれば死ぬほど録画できるとほくそえんでいたのだが、もういくらも空きがなくなってきた。整理しなければと思いつつ、これはいい映画だからもう1、2度は見るんじゃないかとなかなか消せない。HDDの買い増しも考えたが、また同じ憂き目にあうのはわかっているから。

田中裕子がいい。「ホタル」では不治の病の役なのだが、なんだか「病」が似合う。泣いてるようで口元は微笑んでいる。病は、引き返せないうえに先に希望もない暗い道。特攻隊の生き残り漁師の夫役、高倉との旅が悲しい。監督を兼ねた降旗康男の脚本もよかった。大泣きさせずに、ジワっと涙をどこかに滲みこませた。「ホタル」なんて、いい題名だなー。

田中がコツコツと生きる牛乳配達人の役の「いつか読書する日」(05年)も好きな映画だ。薄暗いなかに街灯が点々とともっている長崎の山手の夜明けのシーンと、独身中年役の田中とかっての同級生役の岸部が、長年の思いをぶつけあうところは好きなシーン。

牛乳配達人の田中がバッグの中の牛乳瓶を鳴らしながら、階段だらけの街を駆け足で配達して回る音と追いかけるような音楽が耳に残った。美人じゃないのがいい。哀しい顔をしている。ジュリーとの仲も良いとのことなので、実生活は不幸ではないのだろうが、映画の役の小さな幸せをカミシメテ生きる、そんな感じがいい。かわいそうというのではない。

いっぱいの幸せなら、誰でもウレシイ。田中裕子がやる役はいつも、小さな幸せを精一杯喜んでいる。私もなんとか、いつもそういう気持ちでいられるといいと思う。フシアワセはいらないが、幸せなら小さくて充分。

2017年10月13日金曜日

ロバの耳通信「いぬやしき」

「いぬやしき(10)」(17年 奥 浩哉 イブニングKC)

先月ベストセラーをチェックしていて偶然出会ったマンガ。ネットで読みだして夢中になり、ラストとなるらしい10巻のアップロードを待っていた。「イブニング」(講談社の漫画雑誌)の連載ものらしく、すでにアニメ化もされ、来年には実写版も出ると。確かに、よくできた原作、日本のマンガはすごい。

宇宙人により機械にされた初老の男(犬屋敷)の物語。必死に手に入れたマイホームが家族に喜んでもらえなかったたばかりでなく、ガンで余命3か月を宣告され、生きる意欲を失ったサラリーマンが、ホームレスを助け感謝されたことから人助けを人生の目的と定め、落ちてくる隕石の方向を変え地球を救う・・とまあ、とんでもない設定なのだが、語られるのは家族愛。老け顔で、家族からも「おじいちゃん」とバカにされた父親が、妻や娘の愛を取り戻すという「いい」ハナシ。泣ける。

原作者の奥 浩哉はベストセラーとなりこれもアニメ化されたSFストーリー「GANTZ」(ガンツ)(00年ー03年 週刊ヤングジャンプ連載)で、ストーリーより緻密な手書きマンガが気に入り、何度か見ていたが、この「いぬやしき」も緻密な背景がすごくいい。

2017年10月7日土曜日

ロバの耳通信「カズオ・イシグロ」

「カズオ・イシグロ 」

カズオ・イシグロのノーベル文学賞が決まった夜、カズオ・イシグロ原作「わたしを離さないで」(10年 米)の夢を見た。

私は臓器提供のために施設で育てられたクローンのひとりで、農場のようなところに逃げ込んで、映画とは違い、薄暗い泥道をあてなく逃げ回っていた。散々遊んだゲーム「バイオハザード4」とゴチャゴチャになったらしい。

「わたしを離さないで」ではアンドリュー・ガーフィールド(「アメイジング・スパイダーマン」(12年 米)やキャリー・マリガン(「17歳の肖像」(09年 英))の素晴らしい演技のおかげで生涯忘れられない映画になった。生涯忘れられないなんて大げさな言い方だが、なかなかこう言えるような作品に出会えることが稀になった。

前に綾瀬はるかのテレビドラマ「わたしを離さないで」(16年 TBS)を放送したのでそっちも見たが、ミスキャストのせいか、すっかりつまらなかったのがひどく残念な気がする。綾瀬が嫌いなのではない、いや綾瀬は好き。ただ、ほかのキャストも含め、ゼンゼン役に合っていないのだ。原作(08年 ハヤカワ文庫)がいいだけに残念。

カズオ・イシグロは映画「わたしを・・」の原作者ということでで名前だけは知っていたが、カミサンが図書館から借りてきた「忘れられた巨人」(15年 早川書房)を先に読んでカズオ・イシグロ火が付き、ブッカー賞受賞の「日の名残り」(01年 ハヤカワ文庫)も図書館で予約しようとしたが、すごい数の待ちということで断念。大好きなアンソニー・ホプキンス主演の同名の映画(93年 英米)があるということでそれを探している。

「忘れられた巨人」はアーサー王時代のイングランドを舞台とした老夫婦の旅物語。土屋政雄の衒わない翻訳がアタマに自然に浸み込んでくるにも拘わらず、読み返してゆくと隠れていた亡霊のようなモノがページの隙間から顔をのぞかせるから、ページに指を挟み反芻しながらオソルオソルまたドキドキしながら読んだ。映画化の話しも進んでいるらしい、これも期待したい。

2017年10月2日月曜日

ロバの耳通信「逢いびき」

「逢いびき」(14年 邦画)

当たり役というのだろうか、極めて個人的な見解で、だが。女優が輝くほど魅力的に見える映画がある。「アトランティスの心」(01年 米)のミカ・ブーレム、「鉄道員(ぼっぽや)」(99年)の広末涼子、「高校教師」(93年 テレビドラマ)の桜井幸子、「隠し剣 鬼の爪」(04年)の松たか子など、これらの女優への自らの好意、まあ「好き」を確かめるために映画を見る。代表作でないものもあるが、そんなことはどうででもいい。

この映画を見るまで女優丸純子を知らなかった。マイナーな作品だし、みつけたのも YouTubeの予告編めぐり。約2分の予告編のなかのほんの数秒のいくつかのシーンで、好きになってしまった。ほかのいくつかの作品もチェックしたのだが、「逢いびき」ほど丸純子がすてきに見える作品を知らない。

港町を舞台に人妻が不倫の道を進み、結局幸せになれないという、まあよくあるストーリーなのだが。ただ、こういう出会い方をすると、初恋のように、いつまでも「好き」を続けられないかもしれない。だから、丸純子については、ほかの作品を見ることをやめよう。「逢いびき」は38歳の時。女性がいちばん美しい年齢のしっぽのほうかもしれない。ことしで41歳だと。うん。あきらめよう。