「ホタル」(01年 邦画)
テレビ日和の雨の午後。
ずっと前に撮っておいたテレビ放送。1テラのHDDを買ったときは、これだけあれば死ぬほど録画できるとほくそえんでいたのだが、もういくらも空きがなくなってきた。整理しなければと思いつつ、これはいい映画だからもう1、2度は見るんじゃないかとなかなか消せない。HDDの買い増しも考えたが、また同じ憂き目にあうのはわかっているから。
田中裕子がいい。「ホタル」では不治の病の役なのだが、なんだか「病」が似合う。泣いてるようで口元は微笑んでいる。病は、引き返せないうえに先に希望もない暗い道。特攻隊の生き残り漁師の夫役、高倉との旅が悲しい。監督を兼ねた降旗康男の脚本もよかった。大泣きさせずに、ジワっと涙をどこかに滲みこませた。「ホタル」なんて、いい題名だなー。
田中がコツコツと生きる牛乳配達人の役の「いつか読書する日」(05年)も好きな映画だ。薄暗いなかに街灯が点々とともっている長崎の山手の夜明けのシーンと、独身中年役の田中とかっての同級生役の岸部が、長年の思いをぶつけあうところは好きなシーン。
牛乳配達人の田中がバッグの中の牛乳瓶を鳴らしながら、階段だらけの街を駆け足で配達して回る音と追いかけるような音楽が耳に残った。美人じゃないのがいい。哀しい顔をしている。ジュリーとの仲も良いとのことなので、実生活は不幸ではないのだろうが、映画の役の小さな幸せをカミシメテ生きる、そんな感じがいい。かわいそうというのではない。
いっぱいの幸せなら、誰でもウレシイ。田中裕子がやる役はいつも、小さな幸せを精一杯喜んでいる。私もなんとか、いつもそういう気持ちでいられるといいと思う。フシアワセはいらないが、幸せなら小さくて充分。
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