2017年11月8日水曜日

ロバの耳通信「さよなら、海の女たち」

「さよなら、海の女たち」(88年 椎名誠 集英社)

海のそばで生まれ(と、聞いた)、海のそばで子育てをし(カミさんが)、早朝には遠い汽笛が聞こえるところに住んでいる私には、海には強い思いがある。

図書館の棚の青い背表紙とタイトル、著者名をみて「発作的」に借り出してしまった。

いつものシイナの本は寝っ転がって読むにに最適。

どれも、伝えられない思いがありもどかしく感じながらもそのままにして、いつまでも気にしてしまったり、ずっとあとになって思い出しすこし辛くなる、そんな短編集だった。もっとも印象に残ったのが、最終話の「三分間のサヨウナラ」。女のコと付き合いたくて、映画を撮るという口実で誘い失敗。ずっとあとにそのコからの手紙が来るというだけなのだが、自分にもそんな経験があってシミジミ思い出してしまった。

雨の日のウインカーの動きを、カマキリの腕に例えたところもよかった。シイナの物語にはよく昆虫とか魚の話がでてきて、「秘密宅急便」では”坂道を真面目な昆虫のように一歩一歩真剣にのぼっていった”とか、なんだか和む。

シイナの本は体調がイマイチだったり、ちょっと不安があったりしたときに「第3類医薬品」くらいの役に立ちます。

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