宮下奈都「スコーレ No.4」(09年 光文社文庫)
「羊と鋼の森」(15年 文芸春秋社)で宮下の本を初めて読んでマイってしまい、この作家の本を読みたいと思っていていたら、カミさんが図書館に予約していたこの「スコーレ No.4」を読むハメになってしまった。「ハメ」としたのは、カタカナに加えNo.4と数字付きの名前の本で、しかも(偏見だがあまり、いい本に当たっていない)光文社ということで、とっかかりに悩んでいたが、読み始めたらすっかり魅入られてしまった。
巻末の解説を文学評論家の北上次郎が解説の半分を引用に費やし、”文章を味わいたい”(北上)と書いているが、本当に、この本のどこをとっても、丁寧で優しい。一人の女性が中学、高校、大学、就職と4つのステージを経ながら、家族や友人との優しい関係のなかで育ちながら、少し離れたところから冷静に、自らの心情を記録している。山も谷も、憎しみや嫉妬もないが、悩んでいたいつかの自分もこうだったんだと、いたく共感。手許において、何度も読みたくなるほどお気に入りとなった。
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