「恥辱」(07年 カーリン・アルヴテーゲン 小学館文庫)
なんだかイヤらしい名前の本で図書館の貸出申込みの際ちょっと気になったが、図書館のオジサンはいつものようにシレっと貸してくれた。当たり前か。直訳は「恥」だが、同名で有名な本がある(89年 サラマン・ラシュディ 早川ノベルズ)からか。「隠し事」くらいにしてほしかった。
カーリン・アルヴテーゲンはスウェーデン版「パトリシア・ハイスミス」といったところか。うん、もっと怖いが。
「喪失」(04年 同 シリーズ2作)が私にとっての初見。暗い物語で、奥に行けばゆくほど恐ろしいものが出てきて、帰りの道も分からなくなり途方に暮れてしまって、この一作でオシマイにしていたのが約10年前。まだ、自分に力が漲っていて、怖いもの見たさを探さなくても十分怖いことが溢れていたから、それ以上を求めなかったのだろう。先がそう長くなくなった今、畏れや、もろもろへの躊躇がなくなってきたのは良いことか、悪いことか。
「恥辱」(シリーズ3作)は兄の死に囚われた完璧主義者の女医がオカシクなってゆくメインストーリーに加え、肥満のためヘルパーの力を借りなければ暮らせなくなった女の物語で共通する「孤独」が限りなくて怖い。著者も若いころに兄を事故で亡くし鬱に苦しんだというから、感情描写は真に迫る。

柳沢の翻訳で秀逸だと思うのは「笑う男」(05年 ヘニング・マンケル 創元推理文庫)。下手な翻訳のために面白い作品がワヤになった作品を知っているが、柳沢は実にうまい。ベストセラーになった「笑う警官」(13年 角川文庫)など「マルティン・ベックシリーズ」(「ロセアンナ」から「テロリスト」まで マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 共著)も柳沢の翻訳。
ずいぶん昔の話だが、この「マルティン・ベックシリーズ」の英語版の何冊かを辞書片手に苦労して読んだ覚えがあり、当時仕事で付き合いのあったスウェーデンの人にマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーという作家を知っているかと尋ねたら、破顔一笑、スウェーデンではとても有名な作家で、日本人がなんで知っているんだと、ハグされるほど喜んでもらえたのを思い出した。
ずいぶん昔の話だが、この「マルティン・ベックシリーズ」の英語版の何冊かを辞書片手に苦労して読んだ覚えがあり、当時仕事で付き合いのあったスウェーデンの人にマイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーという作家を知っているかと尋ねたら、破顔一笑、スウェーデンではとても有名な作家で、日本人がなんで知っているんだと、ハグされるほど喜んでもらえたのを思い出した。
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