「からだのままに」(10年 南木佳士 文春文庫)
50代に書いたらしいこの作品だが、悟りを得た老師のような趣きがある。医者として多くの死に立ち会い、自らもパニック障害やら肺ガンや諸病を患ったらこうなるのだろうか。文章は衒いがなく優しく染み通ってくる。著作リストをチェックしたが、ほとんど知らない。「阿弥陀堂だより」だけが、映画を見たような覚えがあるくらい。芥川賞ほかいろいろな賞をとっているようだ、読んでみたい。
長野県佐久市在住、総合病院勤務とある。大きな町ではなかった気がする。
かって、新幹線の佐久平駅ができた頃に何度か訪れた。駅前には商店もまばらでお昼を食べる場所もなく、仕事が終わる夕方まですきっ腹を抱えていたのにもかかわらず、帰りの新幹線の車内で買ったぼったくりの弁当がやたら不味かったのを思い出す。佐久平駅前は今は少しは賑やかになっているだろうか。
「100回泣くこと」(07年 中村航 小学館文庫)
裏表紙に島本理生が書いた解説をがひどかった。ここに結末まで示唆してどうするんだ。愛する人との暮らしと別れ、愛する人は末期のガン。ちょっと、安易すぎないか。悲しくないのは、この物語が「つくりごと」だからだろうか、それともつらい悲しいと書きすぎているせいだろうか。カミさんが図書館から借りた本なんだが、なんだか時間を損した気分。導入部の文章の自然さで後まで読み切ったけれど、ワタシを「泣かせる」本ではない。ベストセラーにもなりたくさんの人を号泣させたと書評には書いてあったが。映画化もされアイドルグループのひとりが主人公、悲しく死んでしまう恋人役をいまも活躍のアイドルが演じ話題になったと。うーん、そういうものか、今の時代は。
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