2021年1月11日月曜日

ロバの耳通信「灰の男」今日は早く休もう。

新型コロナとの付き合いも凡そ一年となる。毎日増え続ける感染者数の発表をスマホで追い、一喜一憂しながら暮らしてきた。この数カ月、感染者数は途方もない数字になっているが、息をひそめていること以外、なすすべもない。恐怖や閉塞感からウツになっている人が多いとの報道に、そりゃそうだろうと。ワタシもそうだよ。
具体的な提言は何もなく、いつも語尾が小さくなって、結局何を伝えたいのかもわからない日本のトップのテレビ会見を見ても、最近は腹も立たなくなった。

ただ、家族や親しい人たちの無事を祈ることぐらいしかできない自分が悲しい。明日も寒いそうだ。早めに暖かな布団にはいり、悪い夢を見ないで眠りたい。


「灰の男」
(04年 小杉健治 講談社文庫)

600ページを超す大作である。講談社文庫だから活字も印刷もキレイだし文章も自然で衒ったところがないからそう、負担にもならないし、近年読んだ本のなかでは一番の量と「質」であった。登場人物も多く、とても覚えられないが主軸となる何人かがキッチリ描き分けられているから混乱は少ない。結局キーになる何人かの人名をポストイットに書き込むことでメモリーを補完。彼らを中心にしたいくつかの物語が並行して語られ、中盤からそれらの人たちが段々つながってゆき、最後はひとりの哀しい物語として語られる。

舞台は東京大空襲とその後。東京大空襲の悲惨な姿をこれでもか、これでもかと繰り返し描きながら(1)東京大空襲は昭和20年3月10日というのが常識となっているが、そうではなかった。(2)なぜ下町が標的になったか。(3)なぜ空襲警報が遅れ、多くの人が亡くなったかーの3つの謎解きを読者は迫られるのだが、私には著者が答えを教えてくれるまでわからなかった。あぁ、そうだったのか。

これが当時の誰かと誰かの謀略として語られ、そのため誰かへの誰かの忖度のせいでこの優れた小説は、いかなる賞も獲ることができなかったのではなかろうか。

ここまで書いてきて少し反省。気が滅入っているときは、少しでも明るい題材を選ばなければいけないよね。うん、うん。

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