2022年5月15日日曜日

ロバの耳通信「光あれ」「PK」

「光あれ」(11年 馳星周 文芸春秋社)

愛読の馳星周だから思い入れもあったのだろうが、出だしの数ページで躓いた。大人のノワールを期待していたが、いわば青春モノ。5つの掌編が時系列で並び、敦賀原発が底辺に横たわる。そう、敦賀原発に関した何かが起きるのではなく、舞台としてのチェルノブイリ事故のニュースや敦賀原発はホントは怖いのかな、と遠巻きしてブツブツ言うだけ。
私のなかの馳は、アウトサイダーの鋭い感性で体制や偽善に対する対抗勢力でありそこを買っていたのに。ハードカバーながら、「オール読物」初出の連作だと。馳は「不夜城」「鎮魂歌」「漂流街」(96年ー99年)のあとには「こんなもの」を書いていたのか。作家に期待しすぎてはいけないのだね、きっと。

「PK」(14年 井坂幸太郎 講談社文庫)

井坂幸太郎は最後まで読んだことがない。3編がはいったこの本も最初の「PK」だけはなんとか読み通したが、次の「超人」は数ページで挫折した。作風は筒井康隆なのだが、要は面白くないのだ。多分、こうして作風の類似との感想を書くだけでも筒井は嫌がるだろう。筒井のソレでは、ひねりやウイットの底辺に反骨があり共感しながらよく読んだものだが。カミさんに、井坂は自分に合わないとグチったら、井坂の作品は「迎合」だと。若い人に合わせようとしているから、ワレワレ世代には違和感があるのだと、うーん、そうなのか。

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