2022年5月20日金曜日

ロバに耳通信「ONODA 一万夜を越えて」「コールド・アンド・ファイヤー 凍土を覆う戦火」

 「ONODA 一万夜を越えて」(21年 仏・独ほか)原題:Onoda, 10 000 nuits dans la jungle

フィリピン・ルバング島から終戦から約30年後に日本に帰還した小野田寛郎旧陸軍少尉の物語。第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品で、フランスの新進気鋭のアルチュール・アラリ監督が国際共同で映画化ということでどんな作品になったかが気になっていたのだが、奇を衒うことなく心に残る作品にしてくれた。小野田さんが帰還した際は、お祭りじみた取り上げ方で、お国のためと信じて孤独で長く辛い日々をジャングルで生き延びた英雄の扱いに不満を感じたりしたものだ。

小野田少尉役の遠藤雄弥(青年期)・津田寛治(成年期)、中野学校での上官役のイッセー尾形が良かった。特に津田寛治は新聞やニュース映像で見た小野田さんの印象とあまりにも似ていて驚いた。約3時間の長編だが、動画を見ながら小野田さんがジャングルで過ごした30年と比べれば短いなと。

「コールド・アンド・ファイヤー 凍土を覆う戦火」(14年 デンマーク)原題:1864

プロイセン(現ドイツ)とデンマークの戦い、第2次シュレースビヒ=ホルシュタイン戦争を題材にしたテレビドラマの映画化だと。兄弟がこの戦争に志願し、結局兄だけが生き残り、亡くなった弟と幼馴染のインゲが残し孤児院に入れられていた子供を引き取るという物語。

ひどい邦題のせいでただの戦争映画だと思っていたら、ペーターとラウス兄弟とインゲの青春映画。戦闘シーンはいままで見たどの戦争映画にも劣らない迫力と生々しさだが、なによりデンマークの田舎の風景をロングショットで、また人物の表情をアップで撮った映像美は、CGに毒されたワタシの瞼に焼き付いたる。

監督(オーレ・ボールネダル)は、「シェイプ・オブ・ウォーター 」「ジョン・ウイック」シリーズ(17年)などで超有名らしいが、この作品だけでもチカラが分かった。

いずれにせよ、衒った娯楽作品が多い昨今、こんなに美しく、こんなに哀しい戦争映画をワタシは知らない。


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