「その時までサヨナラ」(12年 山田悠介 文芸社文庫)
文庫本のカバーの印象から青春モノかと思い手に取って、著者紹介をチェックしたら「リアル鬼ごっこ」の作者だという。漫画版(04年 幻冬舎コミックス)を見ていて、学生たちを主人公とした奇妙なスジだったからこれもそのクチかと興味半分で読み始めたら、これが予想外の面白さだった。読み終わって、やっぱり作家ってすごい、ストーリーテラーとはこういうことかと。「ありえない物語」だから、落としどころの不自然さなどストーリーに無理もあるが、前半の編集者としてのワーカホリック、中盤の妻を失いさらに仕事でミスをして閑職に追いやられ、また残された息子との暮らしで戸惑う部分、後半の息子との暮らしを再建すべく生まれ変わるところまで、ハッピーエンドとまでは行かないにしろ、哀しい話をそのままで終わらせなかった作者に脱帽。山田のほかの作品も読んでみたいと、強く思った。
WowWowでテレビドラマ化(10年)されたということでチェック。キャスティング見てやめた。いい原作なのだから、映像で台無しにしてもしょうがない。
「不死症」(16年 周木律 実業之日本社文庫)
”常識を揺るがす究極のバイオホラーXミステリー”が裏表紙の釣り。バイオテクで生まれたバケモノとの戦いなんて、「パラサイト・イブ」(07年 瀬名秀明 新潮文庫)や「バイオハザード」シリーズ(02年~ 米)の二番煎じじゃないか。まあ、それは許せるとしても、セリフを並べれば小説になると思っているのかこの作家。映像世代なのだろうか、ナカミのない映画をダラ見させられるような退屈な時間。バイオとか不老不死とかを題材に書くのなら、多少は科学的な色付けをしてくださいよ。題名と表紙イラストに惹かれて、ホイホイと捕まってしまったワタシの失敗。どこかで面白くなるだろうとガマンにガマンしたけれど半分くらいで挫折。もしかしたら、めっちゃ面白いラストが待ってたのかも。最後まで読まなくちゃ作者に失礼だよと誰かに諭されそうだけど、時間はワタシのものだからね。この作家、初めてだったがここまで酷い目にあうと、この作家しばらくパス。山のような読みたい本がワタシを待っているからね。完全に偏見だとわかっているが、なんだこの作家の名前”周木律”だと。名前で遊んでいる作家で許せるのは、江戸川乱歩くらいだよ(八つ当たり)。
アンデッドとタイトルを冠するからには、先人に失礼の無いようにはしてほしいものですね。
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