「WILL」(12年 本多孝好 集英社文庫)
事故で死んだ両親がやっていた葬儀屋を引き継いだ29歳の女性のまわりに起きる事件。5編の連作がそれぞれに不思議とオチがあり謎解きを楽しんだ。
読み終えて先に読んだカミさんに感想を聞いたら、29歳の女性じゃこんなこと思わない、言わない(年齢・性別の違和感)、セリフが使い分けられていないので並べられるとどちらがしゃべっているのかわからない(主人公が男っぽい性格だということを考慮しても、話ことばの違和感)というワタシが感じた違和感を指摘。ワタシよりずっとたくさんの本を読んでいるカミさんの感想、よって反芻して納得。とはいえ、死を題材にした深い人情話に感動。特にラストの話が良かった、写真屋のムスコの歯の浮くようなプロポーズの文句も、それに喜ぶ葬儀屋のムスメも、読んでいるワタシが照れてしまうくらい感動的。うん、良かった。
前作の「MOMENT」(05年)はベストセラーになったらしい。読みたい。
<追記>ガマンできなくて探してまで読んだ「MOMENT」。うーん、あとに書かれた「WILL」のほうがずっと良かった。無理に書いたストーリーが消化できていなくて、「作り事」だったのが「MOMENT」、コナレて落ち着いたのが「WILL」。
「解」(15年 堂場瞬一 集英社文庫)
政治家と小説家になる夢を語り合ったふたりの大学生。それぞれが、目的に向かって走るふたつの物語がイキイキ描かれた500ページ弱のこの作品を楽しく読めた。最後の「禁じ手」を出すまでは。青春小説や警察小説を得意とする堂場の作品は、骨太なものが多くて、おもいきり入り込んで味わえるから好きなのだが、「解」にはまいった。緊迫のシーンが続き、次はどう展開するのだとドキドキしながらも残りページの少なさが気になっていたが、盛り上がりを東日本大震災でチャラ(「解」とはそういう意味なのか)にしたのは「禁じ手」だと思う。
本作が、もともと月刊誌「小説すばる」(11年4月~)の連載だったことから、東日本大震災(11年3月)が堂場に強い影響を与えたであろうことは理解はできるし、1年(12回)という制約で最終回のここで落としどころを必要としたことも想像できるのだが、ラストのストーリー展開の急ぎ方と始末のつけかたは残念な気がする。文庫本化にあたってチャラになったところを書き直してくれなかったのか。続でも何でもいいから、なんとかふたり主人公の行き末を読みたい。
堂場瞬一、警察OBかと思ったら新聞記者だったのですね。多作な訳です。
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