2020年4月17日金曜日

ロバの耳通信「月光」「境界 横浜中華街・潜伏調査」

「月光」(09年 誉田哲也 徳間文庫)

「ストロベリーナイト」(08年 光文社文庫)、「あなたが愛した記憶」(15年 集英社文庫)と面白さに味をしめ、女子高生の表紙のこの「月光」を借りてきて、雨の日の楽しみにしようと積んでおいて、我慢できずに読みはじめたらこれがなかなか進まない。月刊大衆小説誌の乗り。いや、大衆小説誌でもたまに面白いのもあるから、ちょっと違うかもしれないか。とにかく期待外れ。ピアノ・ソナタ「月光」だと、スカしてるんじゃないよ。なんだか、エロシーンばかりを微に入り細に入りで長くした、ピンク映画の台本じゃないか、これ。ピンク映画で女子高生にピアノ・ソナタ「月光」とか弾かせないでくれよ。
エロシーンをバッサリ切って、音楽教師と女子高生の恋、女子高生に憧れたふたりの男子高校生の想い。事件を追い詰める刑事、週刊誌記者と妹。切り口はたくさんあるのだから、大衆小説への乗りを捨てれば、いい作品になるって。頼むから、書き直してくれないか。いい素材をもったいないって、ピンク映画の台本にするのは。

「境界 横浜中華街・潜伏調査」(15年 本城雅人 講談社文庫)

1981年、中華街で獅子舞の練習に励む3人の中華系高校生が失踪。31年後、失踪していた3人のうちのひとりが死体で発見される、消えた3人の捜査が始まるが、同じタイミングで若い警察職員もいなくなっていたことが明るみに。「境界」は、今と昔、日本と中国、大陸系中国人と台湾人、刑事と外事警察、ベテラン刑事と若い刑事などの「隔たり」を浮きだたせながら時代を超えた謎解きミステリーを楽しんだ。
約30年前の中華街の高校生たちが、懐かしさとともにイキイキと描かれていて、ワタシも遊んだことのある中華街や横浜元町を思い出し、ノスタルジーに浸ることができた。
新聞記者出身だという著者の文章は読みやすく、500ページを飽きさせずラストまで引っ張ってもらったが、ラストの謎解きが意外にあっけなかったかな、と。

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