2020年5月15日金曜日

ロバの耳通信「82年生まれ、キム・ジヨン」「嫁の遺言」「ナイト&シャドウ」

「82年生まれ、キム・ジヨン」(18年 チョ、ナムジュ 斎藤真理子訳 筑摩書房)

韓国のフェミニズムをテーマにしたドキュメント風小説。妻が突然に幽体離脱話法(まあ、多重人格の様子)を始め、夫がうろたえるという出だしから話に引き込まれ、韓国女性のキム・ジョンがいかに男性と差別されてきたかが延々と語られる。韓国「も」日本と変わらないな、という気持ちと、これなら日本の女性のほうがずっと甘やかされているなとも。
いずれにせよ、男側に耳の痛さやうしろめたさを感じさせるには十分。それともうひとつ、女性大統領が生まれた韓国でさえそうなんだから、女性差別はもとより嫌韓も解決される兆しも見えない日本も、あるいはもっと女性差別の酷いイスラム諸国も、加えて黒人差別が全く改善されない欧米特にアメリカ、カースト制を依然解決できていないインドなどなど、この「差別」は、ずっと変わらないような気がする、人間の本質だから。

「82年生まれ、キム・ジヨン」の主人公はナンダカンダ言っても、小金持ちの家に生まれ、大学にを卒業、無事就職、寿退社で優しいダンナと子供に恵まれているのだ。どこの国でも、こんなの不幸せって言わないだろう。名門梨花女子大卒の放送作家の創作読んで、共感したのはどんな人達なのだろう。

「嫁の遺言」(13年 加藤元 講談社文庫)


初めて接する著者で裏表紙にあった”人間がいっそう愛おしく思えてくる珠玉短編集”とあり、期待して読み進めたが7短編の巻頭「嫁の遺言」がまあ、ほかよりは良かったかな、くらい。著者によるあとがきで、大人向けの「おとぎ話」が書きたかったと、ああ、そうなんだ著者にも「おとぎ話」(ワタシのイメージでは、作り話)の意識があったのか。うん、この作家、次回はパスだな。裏表紙の釣りに騙された気分。

「ナイト&シャドウ」(15年 柳広司 講談社文庫)

初めて柳を読んだ「キング&クイーン」(12年 講談社文庫)が「ちょっと」面白い人物設定だったから、同じSPシリーズの本作を読んだのだが、作り過ぎのミステリーというのだろうか、最後までついてゆけなかった。先読みのできる日本の凄腕SP(セキュリティーポリス)がアメリカのシークレットサービスで研修中、先輩シークレットサービスと協力し要人暗殺のテロを阻止するというスジなんだが、「レッドブル」(88年 米)のモスクワ市警刑事(アーノルド・シュワルツェネッガー)とシカゴ市警の部長刑事(ジェームズ・ベルーシ)の面白コンビを思い出した。
アメリカ大統領とシークレットサービスの関係など、雑学知識は増えたが、柳光司のSPシリーズはもういいかなー。

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