こういう作品を見ると、日本映画も捨てたものではないと心底思う。江戸時代末期、農家の手伝いをしながら江戸へ上る機会を伺う若い浪人(池松壮亮)は手練れながら、人を切ることができない。その池松を慕う農民の娘役が蒼井優。若い浪人を京に誘う剣豪役が塚本晋也。自らが監督、脚本なども兼ねているこの作品でも凄い存在感。スコセッシ監督の「沈黙 -サイレンス- 」(16年 米)のモキチ役にも通じる存在感だ。塚本を語りだすと、自分でもコントロールできなくなるからやめる。「ラストサムライ」(03年 米)でトム・クルーズを慕う飛源少年を演じ映画デビューした池松壮亮は、「斬、」でもまっすぐな眼をした武士をスクリーンいっぱいに演じている。男たちの意地の張り合いに、叫ぶことしかできなくなった蒼井の咆哮で映画が終わる。音楽も効果もハリウッドを凌ぐ一級の作品。
「蛇のひと」(10年 邦画)
蛇が何より嫌いだから、蛇という名のあらゆるものも遠ざけていて、この映画の題目を見て、あー、途中で蛇がチラッとでもでるとイヤだなーと思いつつ、面白くて最後まで見てしまった。最後まで、ワンカットの蛇も出なかったのは、僥倖。
「いいひと」を演じた西島秀俊が怪しげな大阪弁だが、実にいい味を出していたし、失踪した「いいひと」を探す部下役も永作博美も役にはまっていた。西島課長が残業している永作に「夜、口笛を吹くと、蛇がでるぞ」と脅かすシーンなんか、表情を顔に出さない西島にピッタリ。さらに、西島の少年時代をやった子役の出来が最高。日本にはこんなにうまい役者がたくさんいたのかと、再認識するほどの多くの役者が、それぞれピッタリの役。脚本も良くて、きっとすごい原作があるのだろうと調べてみたら、「WOWOWシナリオ大賞」受賞作品(09年 三好晶子)だと。
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