2022年2月28日月曜日

ロバの耳通信「夜明けの空を掘れ」

「夜明けの空を掘れ」(11年 沢村凛 双葉文庫)

文庫化に際してタイトルを変えたらしい。前のタイトルは「笑うヤシュ・クック・モ」(08年 双葉社)だと、そういうことか、タイトルを変えても面白くないものは面白くない。私が読んだ沢村凛はこれで3作目。通算0勝3敗。相貌失認をテーマにした「タソガレ」(14年 講談社文庫)つまらなかったことだけの記憶しかない「カタブツ」(08年 講談社文庫)。
図書館の本を借りることになってこの失敗が増えた。古本屋さんでもお金を出すとすれば、著者をチェックし、出だしを少し読んで、前に読んだことがあるか、著者がお気に入りか、はては出版年や装丁まで時間をかけて吟味するのだが、図書館の棚から取り出すのに背表紙が水色か(幻冬舎)とか出版年(キタナイ本より新しい本のほうがいい)、著者をチラ見するだけだから、こういう失敗になる。つまりは本を選ぶのに真剣味がないのだ、先行き長くないというのに。沢村凛という名前がなんだか凛としているようで気に入っていたんだが。
「夜明けの空を掘れ」が、どう面白くなかったか、いや気に入らなかったかは、あまりにアリエナイ物語だったから。事実は小説よりも奇なりだし、小説はほとんどが作者の創作なのだから已むを得ないのだが、それがあまりに現実世界から乖離してしまうと、その乖離を合理的に説明してくれないとただ回りくどく感じるだけ。

2022年2月25日金曜日

ロバの耳通信「プライベート・ライアン」「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野」

 「プライベート・ライアン」(98年 米)原題:Saving Private Ryan

第二次大戦時にひとりの兵士を救出するために多くの部下を失い、自らも命を落とした中隊長(トム・ハンクス)の物語。

最初に見たのは20年以上前にレンタルDVDで。その頃一泊二日借りてきた夜は迫力ある戦闘シーンに息を詰め、深夜まで続けて2回見た。その後何度もDVDを借り出しては何度も見た。

数日前、たまたまYouTubeで、戦争映画トップテンでショートフィルム見つけ、懐かしくて動画サイトで探した。さすがにオマハビーチでの戦闘シーンや狙撃シーンなどは繰り返し見ていたから、あらためての感動はなかったが、オープニングとエンディングや戦闘の間の中隊長と兵士たちの会話を反芻し、この映画のテーマが反戦だということを確信した。

個性あふれた幾多の俳優たちの演技力だけでなく、監督(スピルバーグ)や脚本、音楽などすべてが一流の作品であることをあらためて感じ、今後これだけの作品が生まれるだろうかとも。近所のレンタルDVD屋さんはだいぶ前に潰れ、画質の粗い動画をネットで見ることしかできなくなったのは残念。大きな映画館でじっくり見たい。


「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野」(21年 米)原題:The Harder They Fall

黒人だらけの西部劇。保安官も流れ者も酒場の女も。

オープニングで夫婦を撃ち殺し、息子の額にナイフで十字架。すぐに教会で牧師を銃殺など続々残酷シーン。キルカウントすればすごい数だろう。とにかくシーンに似合わない音楽やユーモアというのだろうか、ひと捻りのセリフの連続。いや、意味不明の言い回しや残酷ウイットなんぞ、英語もできない生粋の日本人じゃ笑えやしない。

アメリカ南部でも黒人の比率は半分を超えることはないから黒人だらけの西部劇なんてありえないだろうと思うが、そういう映画だからしょうがない。ただでさえ見分けがつかないガイジンのそれも黒人だらけ。うーん、こういう黒人だらけの映画をたまに見かけるけれど、当たったためしがない。コレもハズレ。


2022年2月20日日曜日

ロバの耳通信「愛の不時着」「南極日誌」

 「愛の不時着」(19年~ 韓国テレビドラマ)原題: 사랑의 불시착 ,Crash Landing on You

韓国で放映終了後高視聴で話題になり、日本国内でもネットの書き込みが膨らみ、予告編や高評価のシーンをネットで見るたびに見たいと思っていたが、やっと探しだした韓国動画サイトのソレはハングルが全く理解できないため断念。Netflixだと見ることができることがわかったが、このためだけにお金を払うのも業腹。やっと動画サイトで見つけた「愛の不時着」は第1話を見て放棄。第一印象で気に入らなければ、ソレ以上続ける理由はない。ワタシに残された時間はそう長くはないのだから。

パラグライダーに乗った韓国のワガママやり手の財閥令嬢(ソン・イェジン)が、突然の竜巻のため北朝鮮に不時着。国境警備隊の将校(ヒョンビン)に助けられ愛に目覚めるというラブストーリー。見る前は、悲恋モノをを予想し、泣けるぞと期待していたら、ラブコメディ。そうでもしないと、南北の悲しい歴史を背負った舞台を描くのは難しかったのだろうが、あまりコメディ色を強くしてしまうとどうだかね。つまりは好みじゃない。悲しいだけ、苦しいだけの韓ドラ、誰か教えてくださいな。

この作品の、もはや中年女のソン・イェジンも好きになれない。「私の頭の中の消しゴム」(04年)の初々しいソン・イェジンが懐かしい。

ヒョンビンといえば「王の涙 イ・サンの決断」(14年 韓)や、「レイトオータム」(12年 韓・香港・米)での逃亡者(ヒョンビン)と仮釈放中の未亡人(タン・ウェイ 香港)の悲恋を思い出す。ヒョンビンはこういう、出口のない悲しい結末の映画が似合う気がする。

「南極日誌」(05年 韓)原題:남극일기

南極探検隊が遭遇する不思議を描いたホラー。訳あり隊長(ソン・ガンホ)の暴走というスジなのだが、隊員もみな訳あり。ホラーといってもオバケがでてくるわけでもなく、韓国映画には珍しく、切った張ったもなしで盛り上がりには欠けるが、ジワジワと染み込むような心理戦の怖さ。晴天の空と輝く白い雪の中や吹雪のホワイトアウトの中を黙々とソリを引っ張って目的地”到達不能極”(海岸線より最も遠い地点、未踏の山のイメージ)を目指し、そこにようやく到達するも、”呪われた”隊長は更に進む。

ソン・ガンホ、ユ・ジテ、カン・ヘジョンほか一流のキャスティングのせいもあって、スジは不可解だが怖さは充分楽しめた。韓国の古いヒット作はやっぱり見逃せない。

2022年2月15日火曜日

ロバの耳通信「バーフバリ 伝説誕生」「コードネーム:リクイデーター」

「バーフバリ 伝説誕生」(15年 インド)原題:Baahubali: The Beginning

インド映画を通しで最後までみたのは初めてじゃないかな。ウリ文句が、インド歴代興行収入最高額、予算最高額、世界の各賞受賞とあったからソソられてしまった。

叙事詩の映画化というのも興味があったし、オープニングからキレイな画像で歌と踊り満載のミュージカル風。スジは良くわからなかったが、なにより女優たちがみんなキレイ、それもメッチャキレイ。YouTubeで良く見ているガンジス川の沐浴動画ー派手なサリーを着た色黒の化粧キツメのオバサンとかはこの映画では出てこない。

難は俳優。特に男優の顔がみんな同じに見えて、役名も覚えられないから、主人公と敵役がゴチャゴチャ。それでもラストの戦闘シーンは圧巻。CGも使っているのだろうが、こんなに多くの戦う兵士たちを初めて見た。とにかく、インド映画もココまで来たかと感激しきり。

続編の「バーフバリ 王の凱旋」(17年)も探してみよう。

「コードネーム:リクイデーター」(18年 ロシア)英題:Decision Liquidation

04年にロシアで起きた学校占拠事件を題材にしたロシア連邦保安庁FSBとテロリストグループの抗争を描いている。
テロリストグループ(チェチェンらしい)が盗んだロシアの最新ミサイルをFSBのベテラン工作員の活躍で取り戻すというストーリーだが、敵味方の多彩な武器による派手なドンパチはともかく、GPS追跡システムやらステルスドローンによるテロ監視などロシア当局の機動力に驚き。

銃器や爆発物の規制が格段に厳しい日本だから、事情はかなり違うと思うが、テロリストに対抗するにはこれくらいの機動力は必要なんじゃないかな。

2022年2月10日木曜日

ロバの耳通信「スペクトル」「復讐捜査線」

「スペクトル」(16年 米)

映画の殆んどがネット動画でチェックできるようになったし、YouTubeで予告編も見れる。またwikiで配役の細かいところまでわかるから「ハズレ」ることが少なくなった。この「スペクトル」は配給が新進気鋭の映像ストリーミング会社のNETFLIX、制作がREGENDARYだから面白いはずと確信し、また大ファンのカナダ男優ブルース・グリーンウッド(あの「13デイズ」(00年 米)でジョン・F・ケネディ役を好演)が出ていたから、映画評は良くなかったが見た。好みの問題だろうが実に面白い作品だった。

東欧のモルドバでの廃墟のような街でファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)のように、見えない敵と戦うという設定も良かったし、CGもキレイだし、兵士の装備、拳銃からスピードガンのような武器の出来など、細かいところも丁寧に作りこまれていて迫真の戦闘シーンを楽しめた。賞をもらった作品でもないし、配役も地味なのだが、ちょっと科学的で小難しい筋書きを理解したところで、時間があったらもう一度最初から見てもいいかな。

「復讐捜査線」(10年 米)


原題はEdge of Darkness。なんてひどい邦題をつけるのだろうと思ったけれど、メル・ギブソン好きだし、面白かったからまあいいか。アメリカの民間企業が足跡を隠すため国外の原料で核兵器を作っており、そこに勤めていた刑事(メル・ギブソン)の娘が企業秘密を公表しようとして殺され、刑事が仇を打つ。と、まあ、これだけの単純なストーリーなのだが悪いのが次から次にでてくる。なにより怖いのが、謀略というのだろうか上院議員とかロシアマフィアみたいなのが絡んでいて、すべてが闇に葬られそうになること。ウマく説明できないが、上院議員がワルだったなんてアメリカらしい気がすると思っていたら原作の設定は英国だと。

2022年2月5日土曜日

ロバの耳通信 「ドント・ルック・アップ」「バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」

新作の映画評をチェックして見たのにと、悔しい気持ちいっぱいのクズ映画2作。映画館で見てたら、途中で出たか、昼寝してたに違いない。まあ、そのイミではムダアシ踏まずに済んだんだから良しとしよう。

 「ドント・ルック・アップ」(21年 米)原題:Don't Look Up

Netflixのブラックコメディ。ふたりの天文学者(ジェニファー・ローレンスとレオナルド・ディカプリオ)が地球に近づく彗星を発見、衝突が逃れられないものになった時に大統領(メリル・ストリープ)に直訴。すったもんだあって地球は壊滅。ひとにぎりの要人は宇宙船で脱出。まあ、スジはこれだけなのだが、主要キャスティングもチョイ役も有名俳優たち。顔見世興行というのか、俳優組合の助け合いというか、とにかく豪華配役。こういうのをグランドホテル方式とかアンサンブル・プレイというのだそうだ(wiki)。

シリアス顔でコメディやられてもね、のアメリカ式学芸会。見るんじゃなかったクズ映画。


「バイオハザード: ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」(21年 米・英ほか)原題: Resident Evil: Welcome to Raccoon City

モトになっているカプコンのゲームシリーズ「バイオハザード」(96年~)も、実写映画「バイオハザード」シリーズ(02年~)もメッチャ面白かったから、リブート作品とはいえ期待していたのに、ひどすぎ。

アンブレラ社のあったラクーンシティーは結局ゾンビあふれる街だったという、スジもなにもない展開。登場人物の名前こそ、ゲームや実写映画と合わせたものの、配役がみな無名の大根。ソニー・ピクチャーズも看板だけの詐欺映画を配給しているのか。