文庫化に際してタイトルを変えたらしい。前のタイトルは「笑うヤシュ・クック・モ」(08年 双葉社)だと、そういうことか、タイトルを変えても面白くないものは面白くない。私が読んだ沢村凛はこれで3作目。通算0勝3敗。相貌失認をテーマにした「タソガレ」(14年 講談社文庫)つまらなかったことだけの記憶しかない「カタブツ」(08年 講談社文庫)。
図書館の本を借りることになってこの失敗が増えた。古本屋さんでもお金を出すとすれば、著者をチェックし、出だしを少し読んで、前に読んだことがあるか、著者がお気に入りか、はては出版年や装丁まで時間をかけて吟味するのだが、図書館の棚から取り出すのに背表紙が水色か(幻冬舎)とか出版年(キタナイ本より新しい本のほうがいい)、著者をチラ見するだけだから、こういう失敗になる。つまりは本を選ぶのに真剣味がないのだ、先行き長くないというのに。沢村凛という名前がなんだか凛としているようで気に入っていたんだが。
「夜明けの空を掘れ」が、どう面白くなかったか、いや気に入らなかったかは、あまりにアリエナイ物語だったから。事実は小説よりも奇なりだし、小説はほとんどが作者の創作なのだから已むを得ないのだが、それがあまりに現実世界から乖離してしまうと、その乖離を合理的に説明してくれないとただ回りくどく感じるだけ。