2022年9月30日金曜日

ロバの耳通信「ナイト・サバイバー」「007 スカイフォール」

 「ナイト・サバイバー」(20年 米)原題:Survive the Night

ガソリンスタンド売店の強盗の兄弟に家族を人質に取られた外科医(チャド・マイケル・マーレイ)とその父親の元保安官(ブルース・ウィルス)の反撃、という大筋。兄弟の兄は売店の親父に足を撃たれ、手術をさせるために病院からの勤務の帰りの外科医のあとをつけた、という前スジ。

オープニングの外科医夫妻の夫婦ゲンカや家族で不味そうなビーガン料理を食べるところぐらいから気付いたが、ムダなシーンが多い。配役もゼンゼン冴えない、特に主役のチャド・マーレイがダイコン。ブルース・ウィルスも見せ場なし。とにかく、すべてのシーンが別の場所で撮影したフィルムをムリムリつなぎ合わせて体裁を整えたのかと思うくらい、スピード感がない。脚本が悪いのか、無名の監督がシロートなのか、映画になってない。

ここまで書いてきて、ホントの主役は強盗の兄弟だったのか、と。面白くないことに変わりはないが、視点を変えればC級からB級に格上げできるかも。といっても、もう一度見る気はしない。

コロナ騒ぎで出てきた新作なのに、日本での劇場公開がなかった理由がわかった。DVDが出ているのが不思議なくらいつまらないのだ。


「007 スカイフォール」(12年 米・英)原題: Skyfall

新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開に先立って、ダニエル・クレイグの「スカーホール」「スペクター」のテレビ放映や動画サイトでのアピールにワタシが釣られて本作を再見。再々見か。

「スカイフォール」が好きなのはMI6とMオバサンを恨み、復讐を企てるが最後はボンドに殺されてしまう元諜報部員ラウル・シルヴァ役のハビエル・バルデムがメッチャ好きだから。この作品でも極悪非道の悪人役ながら、陰のある哀しい役を演じていて、存在感はヨレヨレのダニエル・クレイブを遥かに凌いでいた。たまらん。


2022年9月25日日曜日

ロバの耳通信「No.6」

 「NO.6」(~11年 あさのあつこ 講談社)

お試しで契約したKindle Unlimitedの棚で見かけた全7冊、約1500ページの長編。予備知識なしで読み始めた出だしの数ページで罠にかかった感。主人公が12歳の少年。ヤングアダルトかとバカにしていたのに、時間を忘れて読んだ。


テレビもYoutubeも消した就寝前の静かな時間、独り言を言いながら縫い物をしているカミさんの前でKindle Fire のページをめくる。物語は、近未来の理想都市(No.6)で何不自由なく育ってきた12歳のエリート少年が、嵐の夜、窓から飛び込んできたネズミという同世代の少年の傷の手当をしたことから始まる冒険物語。個性あふれる登場人物や次になにが起きるかのドキドキは、幼い頃の紙芝居や漫画雑誌の<次回に続く>の焦燥感にも似て、中々布団に入れない。そうやって焦がれるような読み方をしたのは「1Q84」(09年 村上春樹 新潮社)で青豆という少女を好きになって以来か。

作者によって個性豊かに描き分けられ、いきいきしている登場人物たちのセリフが気に入って、前ページに戻ったりマーキングした。また各章のはじめに引用された半ページほどのシェイクスピアやトルストイの警句なんかも深読みしたから予想よりずっと時間がかかってしまったが、それでも残りが100ページを切ってくると哀しい気分になった。

マンガもアニメもあるらしいからチェックしてみたい。あと、あさのあつこの代表作「バッテリー」も読んでみたい。


2022年9月20日火曜日

ロバの耳通信「スウィングガールズ」「半次郎」

「スウィングガールズ」(04年 邦画)

元気をもらえる映画を紹介しよう。田舎の落ちこぼれ女子高生が「ジャズやるべ!」とビッグバンドを組んでジャズをやる。ラストシーンが「シング・シング・シング」のスゴイ演奏でコンサートをしめくくるのだが、「ムーンライト・セレナーデ」では、バラバラが残る演奏が、このラスト曲「シング・シング・シング」で勢いづくところがワタシのお気に入りで、いつも涙ぐんでしまう。

ワタシも学生時代にブラスバンド部に属していた時期があった。男子校なのに体育会系のような雰囲気もなく、自由に楽器を楽しんでいた。出入り自由の部室の裏はイチョウの林で、全面イチョウ葉の黄色に染まった林のベンチでよく練習したものだ。物まねのウマい部長が海の事故でなくなってからは、部員もひとりふたりと辞めてゆき、そのころはやり出した軽音楽やフォークに押されてブラスバンド部は休部となった。音のしなくなった部室の裏の、やっぱり黄色に染まった林のベンチに座ってよく本を読んだものだ。

「スウィングガールズ」の音合わせのシーンが始まるとワタシはそのメンバーの間に入り込み、一緒に「シング・シング・シング」の波に乗るのだ。


「半次郎」(10年 邦画)

俳優の榎木孝明が企画し自らが主演した中村半次郎(桐野利秋)の生涯を描いた映画。NHK大河ドラマを思わせる音楽と遠景の桜島で期待が膨らむ出だし。監督から配役まで榎木のお友達で固め(想像)、脚本も榎木がかなり手を入れたに違いない。まあ、映画人としてこれだけのスタッフ、役者を集めて作れたのだから良かったね、としかいいようがない。
半次郎を突き詰めて描けばよかったのに、(お友達に出演を頼んだ)幕末維新の志士たちにもスポットを当てたためにピンぼけ。繰り返すが、これだけのスタッフと役者を揃えたのに惜しい。腹立たしいほど、惜しい(!)。

中村半次郎については、多くの小説の題材や映画、テレビドラマとなっているが、「人斬り半次郎」(幕末編、賊将編 99年 池波正太郎 新潮文庫)を推したい。


2022年9月15日木曜日

ロバの耳通信「イコライザー」「フォックスキャッチャー」

「イコライザー」(14年 米)

近く「イコライザー2」が封切りということで、予告編を見ていたら本編をもう一度見たくなって動画サイトのお世話になった。主演の元CIA捜査官役のデンゼル・ワシントンがずっと大ファンで、勧善懲悪の物語も好き。ということで「イコライザー」も何度目かになった。ロシアンマフィアの売春婦アリーナ(クロエ・グレース・モレッツ)の友人役でチョイ役、細い目をしたヘイリー・ベネットがワタシのお気に入り。「アメリカン・ソルジャー」(18年 米)でPTSDを負ったイラク戦争復員兵の妻役を演じていたが、これも哀しい女の役。「イコライザー」でも、アリーナをかばったばかりにマフィアに殺されてしまう売春婦役、ほかの映画でもあんまりいい役がない。めったに見せないけれど、笑顔はかわいいのに。
「イコライザー2」早く見たい。

「フォックスキャッチャー」(14年 米)

ロスオリンピックでレスリングの金メダルをとった兄弟の物語。実話だという。「フォックスキャッチャー」はレスリングファンの大富豪デュポンが作ったレスリング強化チームの名前。フォックスキャッチャーチーム代表の弟はその後のソウルオリンピックで敗退。オリンピックでマザコンで統合失調症で妄想にとらわれたデュポンに、弟の後継でチームの指導をしていた兄は射殺され、弟は格闘技の試合で日銭を稼ぐ暮らし。
見ていて救いどころのない映画。最後まで見なくても辛い結末が予想できてしまう。オリンピックで金メダルを獲ってもその後に幸せな暮らしが保証されていないのはどの国も同じ。マイナースポーツならなおさら。
日本でも元メダリストが何かの犯罪で捕まったという記憶もある。
 
オリンピックのメダリストだからとスポーツ界のトップに君臨していることが多いようだ。だから、どういうハナシでもないのだが。

2022年9月10日土曜日

ロバの耳通信 「少女は悪魔を待ちわびて」「バーニング・クロス」

 「少女は悪魔を待ちわびて」(16年 韓)原題:Missing You


父を殺し服役した男を釈放までの15年待ち続け、復讐を遂げる女を描いたクライムサスペンス。服役した男には仲間がいたとか、女は復讐のため警察署で雑用係として働き男の情報を得ていたとか、ラストは男を自分を殺した犯人に偽装するためブランコで首吊自殺とか、レトリックが込み入りすぎて最後まで見ないうちにスジを見失ってしまった。映画批評サイトでスジを整理し、また最初から通しで見るハメになったが、まあ良かったかな。原作本を読みたくて探したが見つからず。連続殺人鬼+復讐劇なんてのは落ち着いて活字の本で読みたいなあ。

主役のシム・ウンギョンはNHKの韓ドラシリーズ(「春のワルツ」「太王四神記」「ファン・ジニ」ほか)や日本のCM(サントリーウイスキー)に出たり、「新聞記者」(19年 邦画)で松坂桃李の相手役で日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を獲得するなど顔なじみの女優だが、こういうクライム映画で主役を張るには表情に暗さが足りないかな、まだ20代ー若すぎるし。

「バーニング・クロス」(12年 米)原題:Alex Cross

デトロイト市警のアレックス・クロス刑事の活躍を描いたクライム映画だが、アレックスが追うは猟奇殺人犯ピカソ(マシュー・フォックス「トマホーク ガンマンvs食人族」(15年 米)でも好演)が魅力的に描かれていて、この映画の実質的な主人公みたいなもの。猟奇的であったり異常であったりの犯人側にキモチが惹かれるのは、できの良いクライム映画の証。

原作はジェームズ・パターソン。「闇に薔薇」(05年 講談社文庫)を読んだ時の衝撃は忘れられない。「殺人カップル」 98年 新潮文庫)も良かった。この「バーニング・クロス」の原作も昔読んだ筈なのだが、旅先の1ドルショップ(古本屋)でよく買っていたペーパーバックの一冊だったかも、とにかくこのシリーズもののアレックス刑事の活躍は面白かった記憶がある。

2022年9月5日月曜日

ロバの耳通信 「デッドリー・ハンティング」

 「デッドリー・ハンティング」(21年 独)原題:Prey

Netflixのおかげで世界中の新しい映画が見られると期待していたが、時々ハズレを引いているのに気づいた。

カヤックや森を散策しながら独身クラブを楽しむ5人組の男たち。些細なもとから腹を立てたりで仲良しという感じじゃない。そんなにピリピリするなら一緒に来なくていいのにと不協和音も感じながらも、大自然いっぱいの晩秋のヨーロッパの森は美しい。

帰り際、車の近くでひとりが腕を撃たれ怪我。続く銃声に逃げ惑う彼ら。ははーん、これは5人組が過去に起こした悪事への復讐劇か。多分、狙撃犯は女で、この4人組、女にひどい悪さをしたのだろうと、勝手に妄想。シリーズ3作まで続編が作られた「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」(10年 米)みたいな復讐劇かと。

ひとり、ふたりと殺され。途中で立ち寄った山小屋の女子従業員まで撃たれてしまう。おいおい、女子従業員は関係ないだろうと不思議に思っていたら、森のなかで狩人に誤射されて死んだ幼い娘の復讐のため、森にはいってくる人々を片っ端から撃っていたキチガイ女。犯人探しのミステリーの犯人をキチガイにするのはタブーだと思うね。クライムでもミステリーでも、映画も小説もワケアリだからストーリーに感情移入できるんだよ。