横浜を舞台にした新聞記者と女刑事のミステリーサスペンス。2人の孤独な主人公、上司とやりあって本社から横浜支局に左遷された一匹狼の甲斐と潔癖さのために県警内で孤立している翔子。このシチュエーションは堂場作品では当たり前なのだが、衒わないから安心して読める。勧善懲悪、やっぱり娯楽小説はこうでなきゃ。
「サイレント・ブラッド」(11年 北林一光 角川文庫)
失踪した父親の車が長野山中で見つかった。父親の痕跡を探しに向かった息子が地元で知り合った娘と出会う。登場人物は娘の血縁のイタコの老婆やら、ダム開発で大儲けを企む地元の建設会社の社長など、横溝正史ばりのなにかなつかしさを感じる筋ダテの山岳+推理小説。著者北林一光とはこの作品で初めて出会ったが、相性は良さそうだ。45歳で亡くなったというし、作品数も少ないらしいけれど、ほかの作品も読んでみたい。
「ペトロバ 禁断の石油生成菌」(07年 高嶋哲夫 文春文庫)
石油を生み出す細菌がこの作品のテーマだと知って、なんとありふれた素材かとバカにしていた。そんな細菌など有りはしないのだが、小説や映画の世界で何度も登場していたからだ。だから、OPECを始め、世界の石油関連の機関が、この細菌を入手するため、あるいは現行権益を守るために消滅させようとするなんてのは当たり前のシナリオだとタカを食っていた。ところが高嶋の味付けはソレで終わらず、その細菌が有機体、つまり人体を餌とし石油を生み出す、猛毒の感染症の細菌だったと。うーん、そういう手があったか、と。後半の展開はいつもの高嶋ジェットコースター。あっという間に読み切った。高嶋哲夫に”ハズレ”はなかったようだ。
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