2026年8月4日火曜日

ロバの耳通信「石の繭 警視庁殺人分析班」「代償」

「石の繭 警視庁殺人分析班」(13年 麻見和史 講談社文庫)

新人女刑事如月塔子が活躍する警察小説。被害者をモルタルで固めるというちょっと見かけないスジ、捜査手順を細かく明かしながら犯人捜しの謎解き。題もなかなか凝っている。副題みたいな「警視庁云々」は余分。
最初の数ページから感じた違和感、読んでゆくうちにほかのミステリー小説、警察小説との違いに気付いた。主人公はもちろん如月塔子で容姿から性格まで「説明」される。すべてのセリフ、考えたこと、感じたこと、動きなどすべてが「説明」されながら物語が進む。読者は、小説を読むだけで如月塔子と一緒に事件の流れを掴み、犯人にたどり着く。
この小説、シリーズものとなり、また連続ドラマとなる原作の第一作だというから、主人公なり刑事たちの紹介がはいってくるのも多少やむをえないとしても、まあグダグダと「説明」多すぎ。
ミステリーなんてものは虫食いの穴だらけのストーリーを読むから面白いのだよ。虫食いの穴は想像の余地であり解き切れない矛盾なのだよ。名作といわれる警察小説の面白さは、組織のカベ、イヤガラセ、気に入らないヤツなど普通の組織ならどこにでもある不条理をさらに浮き立たせ、そのなかで手探りしながら刑事が犯人捜しに苦労するから面白いのだよ。捜査一課で二年にも満たない女刑事、どうも小柄でカワイイらしいがイッチョウマエに活躍するなんて。うーん、そこは許しても、「説明」だらけの「取扱い説明書風ミステリー小説」なんぞ読みたくないって。

「代償」(16年 井岡瞬 角川文庫)

幼なじみのワルの弁護を引き受けた弁護士の物語。実際の主人公はこのワルの方。井岡が作り上げたこのワルのために読者のワタシはイライラから抜け出ることができない。イライラはこのワルに対しての気持ちだけでなく、モヤモヤした筋立てにも。ん?真実を語ったのは骨壺に隠されていたマイクロカセットだって?うーん、作りすぎだよ、それは。辻褄合わせの小細工が目につく初見のこの作家との相性もあると思う。最後はパーっと、このワルを始末するか、ワルに頑張ってもらいワルを極めてほしかったのだが、うーん、この程度の始末のつけかたか、と欲求不満の炎は消えなかった。

テレビドラマとしてシリーズされているらしいが、チェックしてステレオタイプの配役を見てこれは原作を超えられないと確信。筋も結末も知っているからイライラがつのるだけかな。だから、見ない。

2026年8月2日日曜日

ロバの耳通信「ゼロの迎撃」「珍妃の井戸」

「ゼロの迎撃」(15年 安生正 宝島社文庫)

「生存者ゼロ」(14年 宝島社文庫)のスーパー自衛官の活躍があまりにも面白くて、味をしめて2作目となった安生正。北朝鮮軍による東京壊滅作戦を自衛隊の情報官が阻止するというストーリーはわかりやすく、たぶんハッピーエンドということが想像できていたから安心してジェットコースター劇を楽しんだ。やや、気に入らないのは、こっち側のボスキャラである日本の総理がなかなか骨のある人物に描かれていたことか。普段、迷走だらけの政治劇に付き合わされている小市民としては、そこまで政治家を信用はしていない。改憲議論がくすぶったままだが、自衛隊の組織から自衛隊法などがやたら詳しくてタメになった。安生の「宝島社このミス大賞シリーズ」ではもう一冊「ゼロの激震」(16年)があるらしいから、図書館に予約出さねば。

「珍妃の井戸」(05年 浅田次郎 講談社文庫)

浅田次郎の中国歴史モノが面白かったとブログにあり、早速図書館に行ってみたら「蒼穹の昴」(04年~ 講談社文庫)があったが、4冊組でしかも3、4巻しかおいてない。揃いは手許に全部重ねておいてじゃないと読む気がしないから、近くにあった「珍妃の井戸」を借り出した。裏表紙に”「蒼穹の昴」に続く感動の中国宮廷ロマン”とあって、たまたまチャン・ツイーの映画「女帝 エンペラー」(06年 中国・香港)を見ていて、この映画が面白くてアタマが中国宮廷風というかすっかりその気になってしまっていたからこの「珍妃の井戸」にも期待してしまった。
うーん、残念。ガマンにガマンを重ね100ページくらいまでは我慢して読み進めたのだが、浅田次郎でこんなに相性の悪いのってあったかと思うくらい付いていけない。ただでさえ読みづらい漢字だらけで別名まである中国人だけでなくイギリスの伯爵やら、ドイツの男爵やら、ロシア侯爵はては日本の子爵やらがゾロゾロ。うーん、登場人物が多いというだけでまいってしまった。きっとまだ読んでないところで、ガーって話が進んで面白くなるのかもしれないのだけれども。「蒼穹の昴」・・どうかな、1巻だけ先に借りてみようか。