「悪人」(吉田修一 朝日新聞連載、朝日文庫版)を読み終え、ネットで書評に書き込みをしていたら、映画を見てみろとのtwitterで教えてくれた方が。えっ、映画があるのか。こんなに面白い本なら映画があっても不思議ではないと、早速ネットで。DVDを借りに走る時代は終わった。晴れ渡った夕方だが風の強い中をDVD屋に行く代わりに、動画でスグ見れてしまう。なんて世の中になったもんだ。
「悪人」(2010年邦画)では、本と違い
「九州訛」(長崎弁+
博多弁)のセリフが直接耳にはいってきて懐かしさと聞かないで済ませたい気持ちが交錯した。わが故郷の九州は楽しい思い出があるばかりのところではない。殺され女を演じる満島ひかりも敷居というか、貞操観念が低く、怒りっぽいステレオタイプの九州の女性を演じ、普段はカロリーメイトCMくらいしかなじみがないこの女優の存在感もあったが、なんと言ってももう一方のステレオタイプの九州女、情が濃くて寂しがりや、になりきった深津絵里がとてもよかった。深津絵里はこの映画当時38-9歳、大分の生まれ(だから九州訛りが自然だったのか)だとか、「踊る大捜査線」の湾岸署刑事課盗犯係とはタイプが違う、倦んだ洋品屋店員の役がとてもハマっていた。こういう女性に連れて逃げてと言われれば、誰もが惑うにちがいない。
だれが悪人かという問いだけの、答えのないこの映画は、深読みすれば苦しくなるから、神経症の虞(おそれ)があるムキには薦めない。叶うなら何度か見るといい、深淵を覗くものは地獄に落ちる。
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