2016年10月26日水曜日

ロバの耳通信「共喰い」

「共喰い」(13年邦画)17歳の少年の役で日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得した菅田 将暉(すだ まさき)は確かに良かった。ただ、この映画の良さは原作(田中慎弥による第146回芥川龍之介賞受賞の同名の短編小説)であり、田中裕子(片腕の魚屋の母)、木下美咲(恋人)、篠原ゆき子(父の愛人)、三石研(父)ほか、これ以上は考えられない配役のせいではなかったか。

舞台となった下関の言葉はワタシの故郷のソレと似ていて、映画のあちこちの風景やセリフにデジャビュを感じてドキリとする。ワタシの時代は、こんなに激しくはなかったとはおもうが、青春の鬱屈に大小はない。時間がたてばなおさらそれが大きく響いたり、掠れて小さくなったりもするが。

雨漏りを受ける洗面器の音、夕立の雨の騒ぎ、競って鳴くセミの声がいい。先週買い替えたばかりのオーディオテクニカのヘッドフォンがウレシイ。エンド・クレジットでは「帰れソレントへ」のギターで思い切り泣かせてくれるが、なぜかこの映画にぴったり。暗い映画館だったら、泣いたかも。辛いとか、悲しいとかじゃなくても涙は出る。





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