
藤沢は長塚を丁寧に描いてはいるが、決して愛情を持っては見ていない。咽頭結核の病と正面から戦うこともせず、自分の都合よく診断してくれる著名医を追い求め、借金と不義理を重ね、片思いを膨らませ、気ままな放浪の旅で体を壊してゆく長塚を蔑んでさえいるように思える。長塚の歌でさえ、解説以上のことをしてもいない。藤沢は自らと同じ胸の病で夭逝した長塚の一生に、なぜもっと自らを律して、歌や創作や暮らしを豊かなものにしなかったのかと、同情と怒りを持ってこの小説を書いている。
病は自らの業(ごう)だとしても、それに甘えてしまう傲慢さは人の道から外れること
と、自戒しつつ読んだ。
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