2021年9月18日土曜日

ロバの耳通信「悪医」

新型コロナ肺炎のせいで、医者の本質を見ることができた気がする。
予防接種の予診をした医師の慇懃無礼さは、かかりつけ医の普段の物言いの横柄さと対照的に見えるが本質的には同じものだと気づいているのだよ、俺等(わしら)は。

「悪医」
(13年 久坂部羊 朝日新聞出版)

ガンは治らない。ガンの治療、特に抗がん剤はすごく苦しいということを正面から書いている。ここまでハッキリ書けるのは著者が医者でもあるからだろうが、患者側からの苦しみを必死に伝えようとする。誰に。一方、ガンを治療する医者の苦しみも書いている。苦しむ患者に対し、本当は治らないのだと告げる苦しさ。大丈夫とウソを言う苦しさ。医者の辛さをたくさん書くことで、バランスをとっているようにも見えるが、抗がん剤で苦しむ患者とそれを強いる医者の苦しみを比べるナンセンスも感じてしまう。治らないとわかっている患者を診る医者の気持ちもわかってほしいと医者の代弁をしているようにも見える。はてさて、それはどうかな。一歩下がって、ガン治療に携わる医者も同じように苦しんでいるとしても、そういう真摯に治療に取り組んでいる医者ばかりなのか。

ガン患者は、例外なく苦しい。程度の差はあるだろうが、なけなしのお金を払い、手術をし、抗がん剤を打ち、免疫療法にすがる。それでもかなりの人がただ苦しむだけで助からない。医者も、厳しい選抜試験を経て、莫大な投資をしてきたのだ。とはいえ、マジメに診断もせず、「風邪ですね」で多くの患者を追いやり、患者を薬漬けにしているイイカゲンな医者がいることもワレワレは知っている。
「悪医」ではラストで、担当の医者にもはや打つ手はないと言われたことを恨み、その後別の病院での治療をうけたが最後にホスピスで亡くなった元患者のテープを聞きながら、その医者が悪医にならないように前に進むことを誓う。うーん、結局久坂部が一番言いたかったのは何なんだ。

1 件のコメント:

  1. 医者は生き方であって職業であってほしくないと、ブラックジャックを見て思います。

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