「グレイヴディッガー」(05年 高野和明 講談社文庫)
連続猟奇殺人事件、墓掘人(グレイヴディッガー)、命がけの逃走・・と裏表紙に紹介され、高野和明作とくれば、面白いに違いないと読み始めたのだが、うーん、面白い筈だったキーワードのつながりに必然性もなく、予告編とポスター「だけ」がオドロオドロしい怪談映画みたいな作品。骨髄ドナーが手術に間に合うかと、町中をヤクザや警察に追いかけられるところは、映画だとハラハラするところなのだが、逃げる主人公の心情描写もレンタカーを借りたり、モノレールの線路を歩いたりに必然性も具体性もないうえに、コミカルな味も持たせようと作者自身が面白がって書いているから、読んだワタシは白けただけ。最大の失敗は、450ページを割きながらの小説に、「オチ」がないこと。
実のところ、今まで読んだ高野の作品(「13階段」(04年 講談社文庫)、「ジェノサイド」(13年 角川文庫)など)が面白かったから、この「グレイヴディッガー」も、途中で何度も挫折しそうになりながらも、きっとどこからか面白くなると信じて読んできたのに。時間のムダをした。
「クリーピー」(14年 前川裕 光文社文庫)
第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作(11年)だと。ワタシはミーハーだから、こういう「賞」ものに弱い。サイコミステリーというのだろうか、猟奇殺人の犯人がジワジワとあぶり出しのようにページに現れてくるのがいい。犯人捜しの筋立ては明智探偵風の複雑さでたっぷり楽しめた。「怖い隣人」の設定は、いかにも現代に合っている。映画(「クリーピー 偽りの隣人」(16年))や続編(「クリーピースクリーチ」(16年))もあるらしいが、本編で十分。怖いモノは大好きだが、繰り返される猟奇は性に合わない。
明智先生と小林少年は今や昔。コナン君、湯川教授、黒執事
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